血糖値スパイクの長年の繰り返しが血管のダメージに

 こうした体質なのに血糖値が上がりやすい糖質の多い食生活を続けると、「出にくいインスリンを出そうとして、膵臓がいつも働き過ぎの状況になる」と西村教授は警鐘を鳴らす。しかも年齢とともに、インスリンを分泌する能力は下がっていく。生活を改善し、血糖値スパイクを予防することが重要だ。

【チェック】下記に当てはまる人は“血糖値スパイク”が起こっているかも

□40歳以上である
□糖尿病の親や兄弟姉妹がいる
□甘い菓子や飲料をよくとる
□これといった運動習慣がない
□食事を抜いたり、ドカ食いをする
□妊娠中に高血糖を指摘された

 40歳を過ぎ、代謝が落ちてくるのにスイーツなどをなかなか減らせない、生活が不規則で運動もおっくう…。こんなあなたは血糖値スパイク予備軍かもしれない。チェックが多いほど要注意だ。

血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の違いは?
 血糖値とは血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度のこと。血液1dL中のブドウ糖の重さで表す。食事やインスリンによって数値は変動する。

 一方、ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、赤血球の中にあって酸素の運搬を担うヘモグロビンに、血液中のブドウ糖が結びつき糖化したもの。ヘモグロビンに対するHbA1cの割合をパーセントで表す。過去1〜2カ月間の血糖値の平均を反映し、1回の食事や運動の前後では変化しない。HbA1cは糖尿病の診断基準の1つにもなっているが、近年では血糖値の変化を常に見るほうが糖尿病の予防につながると考えられている。

  次回は、「“血糖値スパイク”を防ぐ食事術【2】」を紹介する。

西村理明
東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授
西村理明 1991年、東京慈恵会医科大学卒。富士市立中央病院などを経て2002年から東京慈恵会医科大学。19年4月から現職。

取材・文/中沢真也 イラスト/谷 小夏 グラフ作成/増田真一