腸内環境をよくしてくれるグルコシルセラミドとは

 グルコシルセラミドは、こんにゃくなどにも含まれる成分。しかし小腸で吸収され、お通じに関係する大腸内の環境を改善するとは考えられていなかった。北垣教授らのマウスの実験で、「麹由来のグルコシルセラミドは他のものと化学構造が異なるので大腸まで届き、ブラウティア・コッコイデス菌という“善玉菌”を増やす」(北垣教授)。

 必要なグルコシルセラミドの量は、「動物実験から換算すると、体重60kgの人で1日100mg。200mlの甘酒には最大4.15mgのグルコシルセラミドが含まれるが、もともと和食中心の食生活では、グルコシルセラミドを1日26〜77mg程度摂取できている」(北垣教授)。甘酒に加え、味噌や漬物、食酢など伝統的な和食の食生活なら、「甘酒1杯を加えるだけでも、便秘改善の効果が期待できる可能性がある」(北垣教授)。

 他にも「甘酒には麹菌の作用でできたオリゴ糖が含まれる。オリゴ糖は腸内の乳酸菌の良いエサになることが期待できる」と明治大学の中島春紫教授。

 酒粕の甘酒にはレジスタントプロテインという、お通じ改善に効果が期待できる成分が含まれている。これは、腸で消化されにくいたんぱく質で、便を軟らかくする。

麹甘酒でも、酒粕甘酒でもお通じが良くなった
 麹甘酒でも、酒粕甘酒でもお通じに関する研究がある。麹甘酒では、ラクトバチルス・サケイUONUMAの麹甘酒を、便通の頻度が低い健康成人14人に、毎朝1日1回(118g)、1週間とってもらった研究。飲用前に比べて、7日間の平均排便回数が約4回から約6回に、排便日数も4日から5日に、有意に増えた(データ:Food Sci.Technol.Res.,25,853-861,2019)。酒粕甘酒では、下記の研究がある。

■酒粕甘酒で、12人中8人の排便回数が増加
■酒粕甘酒で、12人中8人の排便回数が増加
酒粕50gが入った甘酒300mlを1日1回、男女12人に3週間飲んでもらい、排便回数と排便量を調べた。排便回数が有意に増えた人は8人。また排便量が有意に増加したのは10人だった。(データ:醸協;107,5,282-291,2012)