脳に“ゴミ”がたまり始めてから約20年で認知症になってしまう

 まずは認知症の基礎知識について理解を深めよう。

 認知症になると、もの忘れを中心に、日付の混乱、理解・判断力、やる気の低下などが起こる。認知症にはいくつかのタイプがあるが、「最も多いのはアルツハイマー型認知症で、認知症のうち、6〜7割を占める」と慶應義塾大学医学部神経内科の伊東大介医師は話す。この最も多いアルツハイマー型認知症(以下、認知症)は、メカニズムや予防策の研究などが世界中で進められている。

 「発症は65歳以上に多い。初期の主な症状はもの忘れ。通常、旅先で食べた物を忘れてもヒントを聞いて思い出せるが、認知症の場合は、旅行に行ったこと自体を忘れてしまう」(伊東医師)。また、昔の記憶は保持されるが、新しいことを覚えられなくなっていく(下図参照)。

“記憶をためるコップ”に、新しい記憶を入れるスペースがなくなり、新しい出来事は覚えられない状態に
“記憶をためるコップ”に、新しい記憶を入れるスペースがなくなり、新しい出来事は覚えられない状態に

 横浜鶴見リハビリテーション病院の吉田勝明院長は、「認知症では、100から7ずつ引く計算ができなくなる。これは、最初の答えである『93』を覚えていられず、『そこから7を引く』ことができなくなるため」と話す。

 こうした症状は、脳にβアミロイドという“脳のゴミ”がたまり始めることが原因だ。

 「βアミロイドは、神経細胞から分泌される物質で、産生が過剰になったり、排出機能が低下したりすることで脳内にたまっていく。βアミロイドが一定量に達すると、次にタウというたんぱく質がたまり、神経細胞を破壊する。記憶を司る部位『海馬』の働きの低下や、アセチルコリンという神経伝達物質の減少を招き、新しいことが覚えられなくなる」(伊東医師)。

■認知症は、脳に“ゴミ”がたまった状態
■認知症は、脳に“ゴミ”がたまった状態
βアミロイドに集まる薬剤を注射し、PET検査で画像化したもの。右写真で点線で囲った黄色く染まった部分がβアミロイドの蓄積を表す。アミロイドPET検査は、プレクリニカル認知症や軽度認知障害の診断に役立つが、現在は残念ながら研究施設などでしか受けられない(写真提供:伊東医師)