プレクリニカル認知症とは

 βアミロイドは、認知症を発症する15〜20年前から脳にたまり始めることがわかってきた。その状態を「プレクリニカル認知症」と呼ぶが、はっきりとした症状は表れない。βアミロイドがたまり切ってタウがたまり始めると「軽度認知障害(MCI)」へと進行する。これは神経細胞の破壊が始まった認知症予備軍の状態で、もの忘れなどの症状が目立ってくる。

 軽度認知障害から約5年で過半数の人が認知症へ進む。「認知症かどうかは、脳のMRI、脳血流検査、記憶テスト(MMSEなど)から総合的に判断される」(伊東医師)。

 つまり、認知症は突然発症するのではない。認知症になった後も、10〜15年かけて“ゴミ”が増えていき、ゆっくりと悪化していく。もの忘れがひどくなる初期から段階を踏んで高度に進むと、妄想、幻覚、人物の混乱が見られ、介護施設への入所が必要になる。

■認知症は段階的に発症する
■認知症は段階的に発症する

(1)認知症を発症する15〜20年前。βアミロイドがたまり始めた状態。
(2)βアミロイドが一定量に達して、タウがたまり始め、もの忘れが出てくる状態。
(3)軽度認知障害から約5年で過半数が認知症に。10〜15年かけて悪化する。

もの忘れが急速に進んだら脳血管性の可能性あり
 アルツハイマー型認知症の進行は比較的穏やか。一方、突然もの忘れがひどくなった場合は、「脳梗塞や脳出血による脳血管性認知症の疑いがある」と伊東医師。血管が詰まったり破れたりすることで神経細胞が破壊された結果、もの忘れが起こり、最終的に認知症につながる。「命にも関わるため、一刻も早く病院へ」(伊東医師)。血管を老化させるメタボの治療が、予防につながる。

 次回は、認知症の予防法について紹介する。

伊東大介
慶應義塾大学医学部神経内科 医師
伊東大介 慶應義塾大学病院メモリークリニックで認知症の診療にあたるとともに、治療薬の開発などにも携わる。著書に『認知症 専門医が教える最新事情』(講談社+α新書)。
吉田勝明
横浜鶴見リハビリテーション病院 院長
吉田勝明 日本老年精神医学会専門医、日本精神神経学会精神科専門医。同院開設以来、認知症の高齢者の治療にあたる。著書に『「こころ」の名医が教える 認知症は接し方で100%変わる!』(IDP出版)。

取材・文/海老根祐子 イラスト/谷 小夏 構成/羽田 光