薬は症状を改善するが進行は止められない

 iPS細胞を使ってβアミロイドを減らす予防薬や治療薬の開発が進められているが、現在の薬では軽度認知障害の段階から薬を服用しても認知症の予防はできず、進行も止められない。家族の心得として「大切なのは、変わりゆく親の姿を受け入れること」(吉田院長)。

 認知症では、もの忘れに対する言い訳や作り話による取り繕いがよく見られるが、自分の変化に不安を感じている表れでもある。「家族は、元の姿に戻ってほしいという思いから、『もっとちゃんとして!』などときつい言い方をしがちだが、命令するなど、プライドを傷つけるような言動はNG。症状の悪化にもつながる」(吉田院長)。

 認知機能は衰えても、感情は豊か。ちょっとした役割を担わせて、失敗しないように支援し、できたことを褒めよう。「何より笑顔で接することが大切。ポジティブな働きかけで、怒りっぽいなどの精神症状の緩和も期待できる」(吉田院長)。

 コンサートへ出かけるなど、感動的な体験や、心から笑うことも必要だという。また、デイサービスなど地域の支援も積極的に活用したい。

認知症の人にしてはいけない9カ条
1. 叱りつける
2. 頭ごなしに怒鳴る
3. 命令する
4. 強制する
5. 急がせる
6. 子ども扱いする
7. 役割を取り上げる
8. 行動を制限する
9. 何もさせない
(吉田院長の話より構成)

プライドを傷つける言動は、症状の悪化につながるので避ける。笑顔で接することが大切。
吉田勝明
横浜鶴見リハビリテーション病院 院長
吉田勝明 日本老年精神医学会専門医、日本精神神経学会精神科専門医。同院開設以来、認知症の高齢者の治療にあたる。著書に『「こころ」の名医が教える 認知症は接し方で100%変わる!』(IDP出版)。
伊東大介
慶應義塾大学医学部神経内科 医師
伊東大介 慶應義塾大学病院メモリークリニックで認知症の診療にあたるとともに、治療薬の開発などにも携わる。著書に『認知症 専門医が教える最新事情』(講談社+α新書)。

取材・文/海老根祐子 イラスト/三弓素青 構成/羽田 光