マインドフルネスは対人関係にこそ生きてくる

──すき間瞑想を取り入れると、どんな変化が起こりますか。

川野 感覚が研ぎ澄まされる“気付き”の段階では、例えば食事では、スパイスをたくさん利かせなくても素材そのものの味を楽しめるようになってきます。ただ、同時に、嫌なにおいに気付きやすくなったり、苦手な人に会うとひどく疲れる、という感覚が鋭敏になることもあります。しかし、マインドフルネスではその先に、“受容”の段階が訪れると考えています。禅の境地でいえば、あるがまま、なすがまま、の状態で物事や自分自身を受け容れられるようになるということです。

──どうすれば、受容する力を高めることができますか。

川野 受容力を高めるときに必要になるのが、“慈悲心(じひしん)”です。瞑想するといろいろな考えが浮かんできますが、それを消そうとせずに、雑念が浮かんでいるな、とただ感じるだけにとどめます。呼吸瞑想でも、普段通りの呼吸をただ観察します。こうすることで、ありのままの自分を肯定し、慈しむことができるのです。自慈心があり、自分で自分を大切にしてあげられる人は、他人がどうあろうと自分の軸は揺るぎません。人に対しても不要な警戒心を抱かず、危害を加えそうな人からはさっと身をかわせるようになる。マインドフルネスの効果は、対人関係にこそ生きてくるのですよ。

■川野さんからの言葉
川野さんからの言葉  独坐大雄峰(どくざだいゆうほう)
 独坐大雄峰(どくざだいゆうほう)とは「今あなたがここにこうして座って存在していることこそ、最も尊く素晴らしい」という意味。
川野泰周
精神科・心療内科医、臨済宗建長寺派林香寺住職
川野泰周 RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年、横浜生まれ。慶應義塾大学医学部医学科卒業。3年半の禅修行の後、2014年より現職。寺務の傍ら、都内および横浜市内のクリニックなどで精神科診療を行う。最新著『精神科医が教える 疲れにくい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)のほか、『ずぼら瞑想』(幻冬舎)など著書多数。

取材・文/柳本 操 写真/鈴木愛子 構成/羽田 光