「私が描く、選ぶ、動き出す。」―― 新生・日経xwoman(クロスウーマン)がスタートしました。変化の速い時代、私たちはどんな選択をしてどんな道を歩んでいくのか。自分らしく動き出そうとする私たちの一歩を語り、世代を超えて、次の勇気や力につながっていくサイトを目指しています。

本特集では、この1~2年に仕事や生活面で大きな「変化」を経験している方たちの声を集めました。各界で活躍する11人をインタビューしたほか、300人以上の読者にアンケートを実施。今回紹介するのは、新国立劇場バレエ団指揮者の冨田実里さんです。コロナ禍で外国人指揮者の来日が不可能になり、出番が従来の5倍に急増。そんな中、冨田さんはどのようなことを思いながら指揮棒を振っているのでしょうか。

(上)コロナ禍で海外指揮者が不在 出番が5倍に 冨田実里 ←今回はここ
(下)芸術は⼈間社会の縮図 私なりの発信をしたい 冨田実里

緊急事態宣言が明けて、バレエ公演での指揮の出番が急増。「音楽で人を元気にしたいとずっと感じていたので『やっとそのときが来た。今こそ頑張らないでどうする?』という思いでした」
緊急事態宣言が明けて、バレエ公演での指揮の出番が急増。「音楽で人を元気にしたいとずっと感じていたので『やっとそのときが来た。今こそ頑張らないでどうする?』という思いでした」
●冨田実里さんの「変化」
・コロナ禍で出番が従来の5倍に急増
(外国人指揮者の来日が不可能になったため)

●葛藤・迷い
・自粛期間は音楽活動ができなかった
・いまだに仕事が戻らない同業者が多い

●今の自分を支えるもの
・指揮者の助手経験
・活動自粛を余儀なくされている同業者に対する責任感
・今、改めて感じる総合芸術への情熱
・それぞれ努力を積み重ねている仲間たちの存在

●指揮をしている間、考えていること
・バレエ公演は登山のようなもの。役割ごとの登山コースがある
・バレエ公演は人間社会そのもの

●挑戦したいこと
・自分の良さを生かした指揮を追求したい
・バレエ指揮者の認知を広め、バレエと音楽の世界の懸け橋になりたい

自粛期間前と後で、仕事の状況が様変わり

 新国立劇場バレエ団の指揮者、冨田実里さんにとって、最近の一番大きな変化は新型コロナウイルスの世界的感染拡大に伴う出番の急増だ。

 公演は2020年2月26日を最後に中止となった。「4月に予定されていた外部公演も中止となり、7月末に新国立劇場での上演が本格的に再開されるまで、基本的に家で過ごさざるを得ませんでした」

 しかしその最中にも、新国立劇場で7月に上演を予定されていた子ども向けバレエ公演に向けて、音源を譜面に起こす仕事に着手した。音響・照明・舞台装置・その他スタッフ全員で共有する楽譜を作るという重要な仕事だ。40分の楽曲2つ分を譜面に起こす作業となり、けんしょう炎になるほど大変だったそう。

 夏ごろには、別のバレエ団から10月上旬から始まる公演の指揮を依頼された。海外から招へい予定だった外国人指揮者の来日がコロナ禍で不可能になったためだ。この頃から、冨田さんの出番が急増していく。

 「音楽で人を元気にしたいとずっと感じていたので、『やっとそのときが来た。今こそ頑張らないでどうする?』という思いでした」

 数カ月ぶりに指揮をしたときのことを、冨田さんはこう振り返る。