女性ホルモンの減少や、スマートフォンの使い過ぎなどが、手指の痛みやこわばり、変形を招いている!? さらに頻繁な手洗いや手指消毒で手の表面はガサガサに。痛みなくラクに動かせる、しっとりなめらかな手を保つためのセルフケアを紹介します。今回は、手に現れる痛みや変形の要因について解説します。

一生使える手の整え方
・手の専門医に聞く 手の痛みやこわばりの基礎知識【1】←今回はココ
ストレッチ、スマホの持ち方で手の痛みやこわばりを防ぐ【2】
自分でできる筋膜ケアで、手の痛みやこわばり対策【3】
手の乾燥や老化を防ぐ 正しいハンドクリームの使い方【4】

痛みや変形の要因は、女性ホルモンの減少と偏った手の使い方に

 特に40代以降や、更年期の女性に多い手の病気として挙げられるのが、「手根管症候群」「ばね指」「へバーデン結節」。
 「いずれの病気も原因は解明されていないが、更年期の女性に多く見られることから、女性ホルモンが関係していると考えられている」と話すのは、手専門の整形外科である柏Handクリニック院長の田中利和さん。

 まずは、「手根管症候群」「ばね指」「へバーデン結節」について詳しく紹介しよう。

「手根管症候群」「ばね指」「へバーデン結節」

手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)

手首のところにあるトンネル状の手根管の中は、1本の正中神経と、指を動かす9本の屈筋腱が、滑膜に覆われた腱鞘を伴い、走行している。指の使い過ぎや女性ホルモンの影響などで滑膜が厚くなると神経が圧迫されてしびれなどの症状が生じる
手首のところにあるトンネル状の手根管の中は、1本の正中神経と、指を動かす9本の屈筋腱が、滑膜に覆われた腱鞘を伴い、走行している。指の使い過ぎや女性ホルモンの影響などで滑膜が厚くなると神経が圧迫されてしびれなどの症状が生じる

 主に親指、人さし指、中指、薬指の半分にしびれが生じる。急性期は明け方にしびれが強く出て、手を振ったり、指を曲げたり伸ばしたりすると少しラクになるのが特徴。こわばりも出る。進行すると親指の筋肉が萎縮し、物をつまむ動作や細かい作業がしにくくなる

ばね指

 指を曲げた後、指が伸びなくなり、伸ばそうとするとばねのように急に伸びる。進行すると反対側の手を使わないと伸びなくなり、無理に伸ばそうとすると強い痛みを感じるように。更年期の女性に多く見られるほか、手や指をよく使う人にも多い。

通常、指を曲げる働きをする屈筋腱は、関節の内側を覆う滑膜が潤滑油となり、腱鞘の中をスムーズに出入りしている。しかし指の使い過ぎやホルモンの異常、細菌感染など何らかの原因で滑膜が炎症を起こすと屈筋腱の出入りが妨げられ、指の動きが制限されて痛みが発生。さらに腱鞘の入り口が狭くなると、そこを通過できない屈筋腱が引っ掛かり、ばねのような現象が起こる
通常、指を曲げる働きをする屈筋腱は、関節の内側を覆う滑膜が潤滑油となり、腱鞘の中をスムーズに出入りしている。しかし指の使い過ぎやホルモンの異常、細菌感染など何らかの原因で滑膜が炎症を起こすと屈筋腱の出入りが妨げられ、指の動きが制限されて痛みが発生。さらに腱鞘の入り口が狭くなると、そこを通過できない屈筋腱が引っ掛かり、ばねのような現象が起こる

へバーデン結節

 指の第1関節の軟骨の変性によって変形が起こり、痛みを伴う。ペットボトルのふたを開ける際に第1関節に痛みを感じることが初期のサインとなることも。

左は痛みがあり、腫れている症例。右は痛みがなく、変形した症例。ある程度進行すると赤みや腫れが引き、痛みなく変形だけが残る場合もある。写真提供/柏Handクリニック
左は痛みがあり、腫れている症例。右は痛みがなく、変形した症例。ある程度進行すると赤みや腫れが引き、痛みなく変形だけが残る場合もある。写真提供/柏Handクリニック

 安静にしていると症状は軽減するが、水疱・粘液嚢腫(ミューカスシスト・下写真)を伴うこともある。

写真提供/柏Handクリニック
写真提供/柏Handクリニック