老眼の兆候を感じたら、早めの対処でラクになることが大切。前回(老眼メガネは早めに使い始めるほどラク!老眼の新常識)は老眼生活を快適に送るためのメガネ、コンタクトの選び方をお伝えしました。今回は老眼の最新話題と老眼の進行を緩やかにするセルフケアについてご紹介します。

老眼の新常識
・「がんばれば見える」が不調を招く 正しい老眼対策とは【1】
・老眼メガネは早めに使い始めるほどラク!老眼の新常識【2】
・手術で治る?米国では点眼薬も 老眼の最新情報【3】←今回はココ

新しい点眼薬が米国で登場!白内障があれば眼内レンズも

「老眼に関するホットな話題の一つは、老眼を改善する治療薬の開発が相次いでいること。老眼は加齢によるものだから仕方ないという認識から、早めに診断し治療していこうという時代が到来している」と慶應義塾大学医学部眼科学教室教授の根岸一乃さん。

 2021年10月に米国食品医薬品局(FDA)で承認されたのが、1日1回の投与で老眼を改善する初の点眼薬「ピロカルピン(商品名はVuity 1.25%)」。

 ピロカルピンを点眼すると瞳孔の大きさが縮小し、遠くの視力に影響を与えることなく近くと中間部の視力が改善。点眼から15分程度で効果が表れ、最大6時間持続することが、40~55歳の750人を対象とした試験で確認されている。ほかにも、水晶体の弾力性を向上させる薬剤が開発されている。

【点眼薬】世界初の老眼改善点眼薬。ほかに開発試験中の薬も
 老眼を改善する点眼薬の開発が進んでいる。アプローチは主に2つだ。
(1)緑内障薬の縮瞳作用を利用。新薬が昨年、米国で承認に
 ピロカルピンは日本では緑内障や診断・治療のための縮瞳目的で保険適用されている点眼薬。米国の治験で遠方視力に影響を与えず近方視力、中間視力の改善が得られた。近い将来、日本でも老眼治療に導入される可能性がある。

◎ピンホール効果で見えやすくなる
明るいところは瞳孔が狭くなる(縮瞳)
明るいところは瞳孔が狭くなる(縮瞳)
暗いところは瞳孔が大きくなる
暗いところは瞳孔が大きくなる
縮瞳とは、瞳孔の大きさが縮小する働きのこと。光が細くなって目に入るので、水晶体で十分に光を集められなくても焦点を結びやすくなり、近くが見えやすくなる

(2)水晶体の弾性を高めて、老眼進行を遅くするタイプも
 老化により固くなる水晶体の弾性を高める働きがある「リポ酸コリンエステル」の点眼薬も開発が進む。酸化ストレスによるたんぱく質の変性を抑える作用がある。