30~40代になって月経が変わってきた背景には、加齢に伴う卵巣機能の低下がある。月経の“困った”にはホルモン治療が役立つが、月経痛がひどくなってきたり、経血が増えてきたのであれば、子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患が隠れているのかも。いつもと違うと感じたら、「年齢のせい」で片付けず婦人科を受診しよう。
食事や運動で卵巣状態を良好に保つ
前編では、卵巣機能が30代中頃から徐々に衰え始め、40歳を過ぎると月経不順という形で表れやすくなることを紹介した。月経周期や経血量が変わって困るという人もいるが、対策はあるのだろうか。
月経不順の対策でまず心がけるべきは生活習慣を見直すこととジュノ・ヴェスタクリニック八田の八田真理子院長は言う。「新型コロナの影響もあって、ストレスや過食などで月経が乱れている人が少なくない」(八田院長)。ストレスや体重増加(あるいは減少)は脳のホルモン中枢に影響を及ぼし、月経不順の原因になるので、ストレス対策や食事内容の改善、定期的な運動も月経不順の予防につながる。
「卵巣は酸化ストレスや炎症に弱い」と言う東大病院産婦人科の大須賀穣教授は、野菜をしっかり食べて抗酸化成分やビタミンを不足させないこと、血液の状態を良くし、炎症抑制にも役立つn-3系脂肪酸を含む青魚などをとることが大事だという。「加齢に伴って減ってしまった卵が増えたり、酸化ストレスで傷ついた染色体が治ることはないが、卵巣機能の低下スピードを緩やかにすることはできる」(大須賀教授)。

月経を整え、骨や肌の老化を防ぐホルモン治療
月経不順の対策にはホルモン剤を用いる方法もあるが、年齢や卵巣機能の状態によってその内容は変わる。「35~44歳くらいまでのプレ更年期では、黄体ホルモンを単独で補ったり、低用量の卵胞ホルモンと黄体ホルモンを投与したりして、月経を整える」(八田院長)。

一方、45歳以上の更年期になると、投与するホルモン量がさらに少ない「ホルモン補充療法(HRT)」が選択肢となる。ホルモン量は少なくても、月経不順だけでなくホットフラッシュなどの更年期症状も改善できる。「乳がんの罹患率が若干上がるが、検診をきちんと受けることで乳がん死亡率は低下することがわかっている。以前は5年ほど使うのが標準的だったが、体調がよければもっと長く使用してもいい」と大須賀教授。