世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。
2020年11月7日にジョー・バイデン氏とカマラ・ハリス氏の当選が確定してから1カ月あまり、米国では次政権の人事に注目が集まっている。バイデンは、選挙キャンペーン中から「ダイバーシティ(多様性)」を優先事項に据え、次期政権を「米国史上最も多様な政権にする」と強調してきた。
女性初、黒人初、アジア系初のハリス副大統領を生むことだけでも、この政権は歴史をつくるわけだが、それにとどまらない。バイデンもハリスも、政権人事を「今日の米国社会を反映した多様性のあるものにする」と繰り返し約束してきた。
トランプ政権の反動? 女性や人種マイノリティーが躍進
米国の多様性は、このたびの米連邦議会選挙にも反映されていた(*)。つい2年前、2018年の中間選挙は、史上最多の女性議員が誕生して「女性の年」と話題になったが、この11月の選挙では、史上最多の人種マイノリティー女性が出馬した。その結果、2021年1月から始まる連邦議会では、上下院合わせて、女性議員数、人種マイノリティー女性の議員数ともに史上最多となる。
他にも、今回の選挙で歴史をつくった人たちがいる。例えば、ニューヨーク州からは、同性愛者であることを公表している黒人の男性2人が下院議員に当選した。これは、米国史上初めてのことだ。デラウェア州では、性転換者であることを公表した上で出馬した30歳のトランスジェンダー、サラ・マクブライド氏が、州議会の上院議員として当選し、これも史上初で話題になった。
こうした現象は、過去4年間のドナルド・トランプ政権への反動のように思える。トランプ大統領の無数の言動によって傷つけられた女性や人種マイノリティーが怒り、さらに「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」運動の盛り上がりや新型コロナで明らかになった格差問題を目の当たりにして、「政治を変えたい」と行動に移したからこその結果だろう。