世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。

(上)日本版#MeToo、なぜ「わきまえて」はダメなのか ←今回はここ
(下)米国で毅然と闘うわきまえない女性たち 次世代へつなぐ

 「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」。2021年2月、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長(当時)による性差別的な発言は、海外メディアでも大きく報じられた。日本では「#わきまえない女」というハッシュタグで、SNS上で拡散。再発防止策などを求める抗議署名運動は、数日間で15万人もの賛同者を集めた。まるで、2017年に米国で始まったセクハラ被害や性差別を告発する運動「#MeToo」の日本版という感じがする。

 「#MeToo」運動が大きな流れとなったとき、多くの有力者(男性)たちが過去のセクハラや性差別の言動を理由に地位を失い、社会的に葬られた。今回の森発言に端を発した一連の動きは、あのとき米国で女性たちが見せた怒りの爆発に似たエネルギーを感じる。

日本の「わきまえて」が強い反発を呼んだ背景

 森氏は、問題発言の中で「組織委員会には女性は7人くらいいるが、皆さん、わきまえておられて」という言い回しをした。なぜこの「わきまえて」が強い反発を呼んだのか。

 「わきまえる」は「物事の道理をよく知っている。心得ている」という意味だ(*)。多くの女性たちがこの言葉に反発したのは、会議での発言は短く切り上げることが暗黙のルールであり、それが心得た「わきまえた人」のやることだと言っているように聞こえたからだろう。

(*)デジタル大辞泉より

 そこには男社会における女性の立場を考えて「空気を読みなさい」「出しゃばるな」「余計なことを言うな」という、上の立場の者が下の立場にいる者に圧力をかけ、黙らせるようなニュアンスがある。これを敏感に感じた女性が多かったのだと思う。さらに、「これは、今始まったことではなく、これまでも数え切れないくらいあった」と、自分ごととして捉えた人が多かったからこそ、共感の渦がここまで盛り上がったのではないだろうか。

 「わきまえる」は、英語でどう表現するか。例えばロイター通信は、「組織委員会には女性は7人くらいいるが、皆さん、わきまえておられて」の部分をこう報じている。

原文

We have about seven women at the organising committee but everyone understands their place.

 直訳すると「自分の身分・立場を理解している」。英語でも、「Understand your place」と言われたら、「身の程を知りたまえ」という、一段下の人を見下すようなニュアンスだ。

森喜朗氏による性差別的な発言は、海外メディアでも大きく報じられ、SNS上で拡散。まるで、2017年に米国で始まった「#MeToo」運動の日本版という感じがする
森喜朗氏による性差別的な発言は、海外メディアでも大きく報じられ、SNS上で拡散。まるで、2017年に米国で始まった「#MeToo」運動の日本版という感じがする