世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。

(上)長時間労働が女性の社会進出を阻む日本。なぜ休めない?
(下)米国から見た日本 長時間労働がなくならない5つの理由 ←今回はここ

 「長時間労働が女性の社会進出を阻む日本。なぜ休めない?」では、米国での働き方を紹介し、日本との違いを浮き彫りにした。この(下)では、日本で長時間労働がなくならない5つの理由を指摘したい。それには、構造的理由と精神的・文化的理由があると思う。順に見ていこう。

理由1)労働市場の流動性の低さ

 米国の労働統計局(Bureau of Labor Statistics)のデータによれば、18歳から50歳までの32年間に、米国人は平均で12の仕事を経験するという。近年の「Gig Economy」(ギグ・エコノミー。インターネットなどを利用して請け負う単発の仕事)の広まりを考えるに、今後若者たちはもっと短いサイクルで職場を変えるようになると思われる。

 筆者自身、周りの同僚たちを見ても、特に若い世代は2~3年で転職や進学を理由に辞めていく人が珍しくなかった。雇う側もそれを前提にしている。また、リストラも日常的に起きる。このように、頻繁に職場を変えることが当たり前という労働市場の流動性は、日本との大きな違いだと思う。

 米国でなぜ、人々が頻繁に転職するのか。それは、より良い仕事(より良い報酬、高い役職)を求める場合、今いる組織の中で垂直に上がっていくより、他の組織(しばしば競合会社)に行ったほうが手っ取り早いことが多いからだ。過去に勤めた組織が多いほど、その人が持っている名刺の数(ネットワーク)、知識や経験も多くなり、それは「財産」と評価される。

 日本では、終身雇用が崩れてきているとはいえ、米国のような激しい流動性はない。残業でも辛いことでも我慢して、同じ職場におとなしくとどまろうとする人が多くなるのは当然だ。

日本では米国と異なり、より良い仕事を求めて頻繁に職場を変えるといった、労働市場の激しい流動性はない
日本では米国と異なり、より良い仕事を求めて頻繁に職場を変えるといった、労働市場の激しい流動性はない