世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。

(上)米国でアジア系を狙った犯罪が続発 何が起きているのか ←今回はここ
(下)アジア系への偏見・嫌悪… 今、加熱する理由とは

 米国では、2020年12月から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。年が明けて3月以降、ワクチンの供給量が増えるにつれて、接種できる対象者も広がっている。

 ここニューヨークでも、当初は65歳以上の高齢者や持病のある人、一定の職業の人(医療、公共交通機関、レストランやスーパーの従業員、配達の人、学校の教員など)が優先だったが、徐々に年齢制限が下がり、4月6日からは16歳以上のすべての人がワクチンを接種できるようになった。10日以降は、海外からニューヨーク州に渡航する人に対する渡航後の検査・自主隔離は義務ではなくなり、19日からはレストランの営業時間が深夜0時まで延長された。

 1年前の4月は、1日当たりの死者数が連日500人を超えるなど、ニューヨークにおけるコロナ禍のピークだった。それから12カ月でここまで出口らしきものに近づけたことは感慨深い。ワクチン接種済みの人数が増え、また陽気も良くなってきたせいで、通りを歩く人の数も増えた。街には少しずつ活気が戻りつつある。

ニューヨークでは4月6日から16歳以上のすべての人がワクチンを接種できるようになった(写真はイメージ)
ニューヨークでは4月6日から16歳以上のすべての人がワクチンを接種できるようになった(写真はイメージ)

アジア人へのヘイトクライムが続発。約7割は女性が標的

 人の活動が活発化するにつれ、犯罪の報道も増えている。実際、ニューヨーク市の犯罪件数はコロナ禍前に比べて明らかに増加した。例えば、年初から6週の間に起きた銃を使った犯罪は、2020年の同じ時期に比べて20%増えた。

 そんな中、アジア人を標的にしたヘイトクライム(憎悪犯罪。肉体的あるいは言語による暴力、攻撃)が続発している。コロナ禍以降、西海岸や東海岸のアジア系が多い大都市、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル、ボストンなどで次々に発生。ニューヨークでも、今年3月25日時点で、暴力を伴うアジア系へのヘイトクライムが12件確認されている(昨年同時期は0件)。

 アジア系の人権団体「ストップAAPIヘイト」によると、2020年3月19日から約1年間で約3800件ものヘイトクライムが全米で報告された。そのうち68%は女性が標的にされ、老人を狙ったものも多い。とりわけ2021年になってから件数が増えており、1月からの2カ月間だけで500件を超えている。

 カリフォルニア州立大学サンバナディーノ校「憎悪・過激思想研究センター」の調査によると、全米の主要な都市で2020年に起こったヘイトクライムは全体では前年比7%減少したものの、アジア系市民に対するヘイトクライムの件数だけを見ると、前年比2.5倍に跳ね上がっている。