世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。

(上)米国でアジア系を狙った犯罪が続発 何が起きているのか
(下)アジア系への偏見・嫌悪… 今、加熱する理由とは ←今回はここ

 アジア人への偏見・嫌悪、ヘイトクライム自体は、今に始まったことではない。100年以上前、19世紀後半から20世紀前半の「黄禍論」は、米国をはじめ、カナダ、欧州、オーストラリアなど白人国家で広まったアジア人脅威論だし、第2次大戦中の米国には日系人への激しい差別があった。記憶に新しいところでは、1980年代の日米貿易摩擦時代にあった日本たたき「ジャパンバッシング」。そして中国の脅威が大きくなっている現在では「反中(anti-Chinese)」の世論がかまびすしい。

米国でアジア人に対する偏見や嫌悪は、100年以上前からあった
米国でアジア人に対する偏見や嫌悪は、100年以上前からあった

トランプ前大統領が増幅したヘイトの感情

 今、アジア人へのヘイトが表面化している理由の一つは、ドナルド・トランプ前大統領にあるだろう。彼は新型コロナを中国のせいだと、声高に言い続けてきた。

 3月17日、アトランタの事件(詳細は「米国でアジア人を狙った犯罪が多発。何が起きているのか」参照)を受け、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は「新型コロナウイルスを武漢ウイルスと呼ぶなど、前政権による有害な表現の一部がアジア系米国人コミュニティーに対する不正確で不当な認識につながり、それがアジア系米国人への脅威を高めたことに疑問の余地はない」と、はっきり述べた。

 サキ報道官の指摘するとおり、トランプ前大統領は、新型コロナを「Chinese Virus」と呼び、さらには「カンフー」と「フルー(インフルエンザ)」をかけた「カンフルー」という造語まで作った。