世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。

(上)ワクチン接種で息を吹き返しはじめたニューヨーク
(下)渡邊裕子 ニューヨークの劇場は秋には再開する気配 ←今回はここ

ジュリアーニ市長がニューヨークに与えた影響

 1994年から市長を務めたルドルフ・ジュリアーニ氏が、ニューヨークの観光産業に与えた影響は大きい。彼は治安改善と市の再開発計画を積極的に進め、特に、当時、昼間でも歩くのが恐ろしかった42丁目を、夜でも子どもを連れて安心して歩ける観光地に変身させた。「ブロードウェイをディズニーに売った」という批判もあるが、私は、20年以上たつ今も、ニューヨークは彼のやり遂げた仕事の恩恵を被っていると感じている。

 2001年のテロは、海外からの観光客に頼りすぎているブロードウェイの弱点を浮き彫りにし、それを機に、ビジネス構造の根本的見直しがなされることになったと言われている。今回のパンデミックも、恐らくこの産業のあり方をさまざまな意味で変えることになるだろう。

 昨年3月12日に劇場が全面閉鎖になった時、私は、次にブロードウェイやメトロポリタン・オペラに行けるのは、2年以上先になるだろうと思っていた。「劇場というものが存続できなくなる可能性だってある」「観光地としてのニューヨークはこれで終わりになるのかも」という声もあったし、私もその可能性は十分あるだろうと思った。その時はまさか1年以内にワクチンが開発・供給されるようになるなどとは想像できなかったわけだが。

 変異株の問題もあるし、英国の状態などを見ていても、まだ全く予断を許さないとは思うが、仮に今の調子が維持できるとすれば、ニューヨークの多くの劇場は、この秋には再開できそうな感じになってきた。

 3月3日、クオモ州知事は、屋外・屋内のエンターテイメントは、4月2日からキャパシティの33%という制限付きで再開して良いと発表した。

 続いて、5月5日には、ブロードウェイの劇場を、9月14日から100%の収容人数で完全再開すると発表、5月6日から早速チケット販売が開始となった。このスピード感、アグレッシブさにはちょっと驚いた。

 メトロポリタン・オペラも、9月27日にシーズンを開幕する予定で、そのために特別なプログラムを用意していると発表している。予定通りに行った場合、これらの劇場は、ちょうど1年半ぶりに幕を開けることになる。無事に実現したら、初日のカーテンコールでは、みんなが涙するだろう。舞台の上でも、客席でも。それどころか、次に劇場に行ったら、私など、足を踏み入れた瞬間にジーンとしてしまうかもしれない。