世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。

(上)NY州知事 クオモ氏のスキャンダル辞任で変わる歴史 ←今回はココ
(下)ニューヨーク史上初の女性知事 その手腕と課題

ウイルスとの合理的な共存方法を見いだしたニューヨーク

 ワクチン接種率が順調に上がり、レストランが屋内営業を再開し、秋には劇場再開のめども立ってきたニューヨークだが、ここへきて、デルタ変異株の感染が急拡大している。ただ、ウイルスに対する私たちの姿勢は、この1年余りで随分変わった。ひたすら家に閉じこもるのではなく「ウイルスが飛び交っている」という前提で、どう行動すべきかをもっと合理的に考えるようになった。ワクチンを打ち、打った後もマスクをし、引き続き手指の消毒などに気をつけて過ごし、それでも心配だったら検査を受けに行く、ということが日常的な話になった。コロナの検査用テントやバスが街のあちこちにあるのが当たり前の景色になった。ニューヨーク市のレストラン、ジム、劇場など室内の施設に入るときはワクチン接種証明の提示が義務化され、2021年9月13日からは、違反した施設には罰金が科される。

 デルタ株に対する警戒心はあるにせよ、ニューヨークは1年前には考えられなかったほど復活した。観光客も戻ってきているし、5番街やタイムズスクエアもにぎわいを取り戻している。潰れたと思っていたレストランやホテルがいつの間にか再開していたり、空き店舗になったところに新しい店ができていたりもする。このまま順調にいけば、9月中旬にはブロードウエイが、9月末にはメトロポリタン・オペラが再開し、さらに街は活気づくだろう。昨年の今頃、私はニューヨークが今のような状態に戻るまでに、2年くらいかかると思っていた。このスピード感で来られたのは、何よりニューヨークに住む人たちがよく耐え、頑張ったこと、そして、全く先の見えない状態の中、州民の気持ちを支え、強く導いたアンドリュー・クオモ州知事のリーダーシップによるものが大きかったと思う。

第56代ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ氏(写真/Office of the Governor of New York/AP/アフロ)
第56代ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ氏(写真/Office of the Governor of New York/AP/アフロ)