世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街に1996年から在住し、ビジネス・コンサルタントとして第一線で活躍する渡邊裕子さんの最新リポートをお届けします。
(上)NY州知事 クオモ氏のスキャンダル辞任で変わる歴史
(下)ニューヨーク史上初の女性知事 その手腕と課題 ←今回はココ
「ブルーカラー(労働者階級)」と称する彼女の生い立ち
2021年8月上旬の時点で、これまで一人も女性の知事を生んだことのない州は全米に20あった。ニューヨークもその一つだ。その歴史が塗り替えられる。
第56代ニューヨーク州知事、アンドリュー・クオモ氏の辞任と同時に、副知事であったキャシー・ホークル氏が後任として知事に就任。クオモ氏の残りの任期1年を務めることが発表された。ニューヨーク史上初の女性知事の誕生だ。クオモ氏にセクハラと高齢者施設のスキャンダルが浮上し、辞任を求める声が上がり始めた2月から、ホークル氏はこの役に就くための準備をしていると見られてきた。
ホークル氏はクオモ氏の辞任発表を受け、10日午後、「私はクオモ知事の決断を支持します。それが正しいことですし、ニューヨーク州民にとっても一番良い道でしょう」「政府のあらゆるレベルで仕事したことがあり、後継第1位の立場にある身として、私には第57代ニューヨーク州知事として州を率いる用意ができています」とツイートした。
現在62歳のホークル氏は、元弁護士。ニューヨーク州バッファローの出身で、アイルランド系移民の両親のもとに生まれた。幼い頃、家庭は豊かではなく、自己紹介文では、自らの生い立ちについて「ブルーカラー(労働者階級)」という言葉を使う。シラキュース大学時代に政治に目覚め、1984年にカトリック大学で法学博士号を取得。政治の世界に入るきっかけは、ニューヨーク州選出下院議員の法律顧問および立法補佐官を務めたことだった。
1994年、ニューヨーク州エリー郡のハンブルク町議会議員に選出され、そこから地道にキャリアを積み重ねてきた彼女のブレークスルーは、2011年に連邦下院議員の特別選挙に勝利したことだった。というのも、ホークル新知事が当選した地域が、伝統的に共和党の強い地域であり、彼女が過去40年間で初めて当選した民主党候補だったためだ。11年から13年まで連邦下院議員を務めた彼女は、14年にクオモ氏が2期目の知事選に立候補した際にランニング・メート(副知事候補)として抜てきされた。クオモ氏が弱い地域で固い地盤を持っていること、女性であることなどが決め手であったと見られている。18年に再当選、過去6年間にわたって副知事を務めてきた。