世界の最先端を体感できる都市、ニューヨーク。この街でビジネス・コンサルタントとして活躍する渡邊裕子さんが米国の今を伝える連載も、今回が最終回。現在、米国でも社会課題になっているミソジニーについて、ドラマ「Sex and the City」の続編に対して起きた女性蔑視発言を基に語ってもらいました。
(上)SATC 20年の歴史はミソジニーへ何を伝えるのか ←今回はココ
(下)「女性の人生後半はつまらない?」ハリウッドの意識変化
ドラマ「Sex and the City」が話題であり続ける理由
1998年から2004年までHBO(ホーム・ボックス・オフィス/米国の衛星・ケーブルテレビ放送局)で放映されたドラマ・シリーズ 「Sex and the City」(SATCと略されることがある)。ニューヨークを舞台に、ファッショナブルで野心的な4人の女性たちが、友情、恋愛、仕事など人生のさまざまな問題について悩み、支え合い、衝突し、成長したり挫折したりしながら生きていく。
このドラマは、当時の大学生から30代くらいまでの女性を中心に爆発的な人気を得て、一種の社会現象として文化的にも大きな影響を残した。主演かつプロデューサーの一人であるサラ・ジェシカ・パーカーは、11歳でブロードウェイにデビューし、舞台でも映画でも実績のあるベテランだが、この番組で一躍人気者になった。
ドラマが始まった当時、HBOは「It’s not TV. It’s HBO」というスローガンで、それまでの地上波には作れなかったような、エッジの効いた、一歩先を行く番組制作を売りにしていた。今の Netflix に通じるものがある。
「Sex and the City」も、主人公たちのライフスタイルのオシャレさ、ユーモアと毒の効いたテンポの速い会話、それまでのテレビにはあり得なかった率直さで女性のセックス観を描いたこと(女性が主役のドラマで、タイトルにセックスという言葉が入っているというだけでも画期的だった)で、従来のテレビドラマとは一線を画していた。
ドラマ・シリーズ終了後、2度にわたって映画化され、2作目の映画が公開されたのが2010年。それ以来、いつ続編が作られるか、作られるとしたらどういう形なのか、約10年にわたって臆測や噂が飛び交っていた。今日のようなサイクルの早い世界で、これほど長い間にわたって忘れられなかっただけでも、この番組の特別さが表れている。
ファンにとっては待望の続編 「And Just Like That…」が21年12月9日にHBO Max で公開され、10回シリーズの初回2エピソードがまず配信された。HBO Max にとっては冬の目玉の一つと言える位置付けで、この数カ月、明らかに大きな予算を投入し、派手に宣伝してきた。
これらのエピソードの具体的な内容は、ネタバレになるのでここでは述べないが、配信が始まるや否や、SNS上では、物語の設定や展開に対して賛否両論、大論争が巻き起こっている。これほど話題になっているというだけでも、制作側にしてみれば大成功だろう。