ITサービスのトレンドをITライターの鈴木朋子さんが解説する本連載。今回のテーマは、ITとともに暮らす私たちの「デジタル遺品」を誰にどのように引き継ぐかについて。Webサービスを提供する主なIT企業の対応を解説します。

Appleが故人アカウント管理機能をリリース

 スマホは私たちの暮らしに欠かせないツールです。スマホにはアドレス帳やメール、写真などのデータが保存され、パスコードや顔認証、指紋認証で保護されています。そして、スマホから写真や動画をクラウドサービスに保存している人も多いでしょう。もし自分が突然帰らぬ人になったら、または家族が不幸にあったら、これらのデータはどうなってしまうのでしょうか。

IoT機器の設定・トラブル解決を行う日本PCサービスによると、2020年9月~2021年7月のデジタル遺品に関する相談件数は306件。前年同時期の130%となった
IoT機器の設定・トラブル解決を行う日本PCサービスによると、2020年9月~2021年7月のデジタル遺品に関する相談件数は306件。前年同時期の130%となった

 その問題に対処すべく、米Appleは2021年12月、iOS 15.2、iPadOS 15.2、macOS 12.1 以降において「故人アカウント管理連絡先」機能を搭載しました。自分の死後、Appleアカウントのデータにアクセスできる人物を生前に指名する機能です。

Appleの「故人アカウント管理連絡先」機能
Appleの「故人アカウント管理連絡先」機能

 対象となるデータは、iCloudやiCloudバックアップに保存しているデータです。故人がiCloudへの保存を設定していない項目は引き継げません。

 故人アカウント管理者がアクセスできるデータは、写真、メモ、メール、連絡先、カレンダー、リマインダー、メッセージ、通話履歴、iCloud Driveに保管されているファイル、ヘルスケアのデータ、ボイスメモ、Safari のブックマークとリーディングリスト、そしてiCloud バックアップ (Appのデータなど)です。

 アクセスできないデータもあります。故人が購入した映画や音楽などライセンスが必要なメディア、App内課金、支払い情報、キーチェーンに保管しているパスワードやクレジットカード番号などです。

 故人アカウント管理連絡先は、生前に本人が相手を指定する必要があります。管理者は複数でもOKで、Appleアカウントを持たない人でも指定が可能です。

 指名された相手は、本人の端末から故人アカウント管理連絡先のアクセスキーを渡されます。指名は断ることもできます。渡されたアクセスキーと故人の死亡証明書をAppleに申請すると、引き継ぎ用のAppleアカウントがつくられます。申請が認められた日から3年間、管理者は個人のデータにアクセスできます。

アクセスキーはプリントアウトして、紙で保存することもできる
アクセスキーはプリントアウトして、紙で保存することもできる

 死去の連絡をする人たちを連絡先で確認したり、撮りためた家族の写真を保存できたりするのは、残された人にとってありがたいこと。そろそろ終活を考えている人だけでなく、デジタルデータの利用が多い若い人も家族や信頼できる友人に託すことを検討してみてはいかがでしょうか。iPhoneやMacを使っている両親がいるなら、一緒に設定しておくと安心ですね。