国の目標が「2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度」だったにもかかわらず、2020年度の雇用均等基本調査(厚生労働省)では、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は12.4%にとどまり、女性の管理職登用は課題です。そんな中、自分の目標とするキャリアを築き、課長として活躍する女性たちは、どのような思いで仕事と向き合っているのでしょうか。今回は、TBSテレビの調査報道番組部で「報道特集」編集長を務める曺琴袖さんに話を聞きました。

曺 琴袖(ちょう・くんす)さん 52歳
曺 琴袖(ちょう・くんす)さん 52歳
TBSテレビ 調査報道番組部 「報道特集」編集長
部次長(課長職)に就任は、入社22年目、45歳
【略歴】
1995年 早稲田大学法学部卒業 TBSテレビ入社 報道局外信部へ配属、記者として国際ニュースを担当
1998年 夕方のニュース番組でディレクター
2004年 ニューヨーク支局に派遣
2005年 「報道特集」ディレクターに就任
2010年 編成局編成部で情報番組担当
2014年 情報制作局でプロデューサーとして、20人余りのチームの責任者に就任
2017年 部次長(課長職)に昇進
2019年 報道局に異動後、「報道特集」に配属
2020年 「報道特集」編集長に就任
※番組内での肩書と会社での職位は必ずしも一致しません

【家族構成】夫と娘(14歳)の3人家族

異動願いで育児期を乗り切った

 幼少の頃から「人のためになる仕事」に憧れ、弁護士を目指して法学部に入ったのですが、学生時代のマスコミ研究会でのサークル活動やテレビ局でのアルバイトを通じて、報道の面白さにだんだん目覚めていきました。一見華やかなテレビ局の裏の過酷な制作現場も見ていましたが、それでも一生の仕事として関わりたいと思うほど「ニュースを多くの人に届ける」ことに魅力を感じたのです。就活では新聞社やテレビ局を受け、TBSに入社しました。

 1995年の新入社員は42人。報道を希望している人も多かったのですが、報道局採用となったのはわずか4人。幸いにして、私はその中の1人として報道局外信部に配属され、国際ニュースの記者を経て、98年に夕方のニュースのディレクターになりました。フットワークのいい若手はどんどん最前線に配置するという方針の下で、毎日飛び回っていましたね。

 04年にはニューヨーク支局に派遣され、帰国後の05年に「報道特集」に配属されました。当時、同番組は、時間をかけて作り込んだ特集を2本放送するというスタイルで、ベテランたちの下でスピード勝負のニュースとはまた違った番組作りを学んでいきました。

 同業の夫と結婚した後も、職場で特に女性ということを意識することなく、慌ただしい日々を楽しんできました。そんな流れが大きく変わったのは、07年に36歳で出産してからです。

 配属先によって差はあるものの、テレビの仕事は基本的に不規則です。しかし、子育てはルーティンともいえるもの。仕事は本当に好きなので、周囲にロールモデルがいない中、なんとか仕事と子育てを両立する方法を考えました

 仕事上のロールモデルはいなかったものの、社内には、同じ立場で奮闘する女性社員がいました。現場に後ろ髪を引かれながら、部署異動を余儀なくされた先輩も大勢います。そうした人たちと経験談や悩み、情報を分かち合っていく中で、私が出した結論は、保育園のときは人にお任せして、小学生になってからは、母親が「おかえり」と家で迎えられる状態をつくろうということ。

 そう考えて、子どもが小学校に上がるタイミングで異動願いを出し、情報制作局で情報番組担当になりました。情報番組は曜日担当制で、他の部署に比べるとまだ、個人にコントロールの余地があったからです。