2022年から変わったお金の制度の1つが「住宅ローン控除」。「改悪」「お得さが薄れた」などと言われていますが、実際は…? 私たちが損をせず、制度を十二分に生かして働いていくために必要な「仕事とお金と制度」の基本を月ごとに取り上げていく連載「ハタラク×お金カレンダー」。ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんが解説します。
2022年度の税制改正(※)で大きな注目を集めている「住宅ローン控除」。住宅購入に関する税制優遇が小さくなるため「改悪」という声も聞こえています。
これを機に、住宅ローン控除制度の基本と、改正の内容を確認すると共に、人生最大の買い物と言われる住宅購入について、「賃貸ではなく購入する必要があるのか」「本当に住宅が欲しいのか」について、改めて考えてみてはいかがでしょうか。今月は住宅ローン控除と住宅購入について学んでいきましょう。
どこが変わった? 今までと今年からの「住宅ローン控除」
住宅ローン控除は、計算された税金から、控除額がバックされる「税額控除」の制度です。
以前に解説した「所得控除」は、税金を計算する前の所得から差し引くもので、実際に取り戻せる金額は、控除額に税率をかけた金額でした。一方の税額控除は、一度計算して決まった税金の額から差し引くので、控除額の分を丸ごと取り戻せることになります。
改正の前後を基本の制度で比べてみましょう。基本的に各年の年末時点の住宅ローン残高(上限あり)に「控除率」をかけると控除額になります。

21年までは、対象期間の年末の住宅ローン残高が4000万円の場合、その1%である40万円が戻ってくる仕組みでした。しかし改正により、住宅ローン残高は3000万円までで控除率が0.7%となったので、同じ残高4000万円のケースでは21万円しか戻ってこないことになります。キャッシュバック金額がほぼ半分の約20万円減少となるので、このケースの場合はとても厳しい改正と感じます。
しかし、実際には4000万円まで借りない人も多く、また、1年あたりの控除額が減る代わりに、期間が10年から13年に伸びることを考慮すると、そこまで改正前と控除額が変わらないケースも多いと思われます。
また、住宅の性能によってローン残高の上限も変わってきます。一定の省エネ基準に適合した物件の場合、4000万円以上になる場合があります。