2022年4月から、私たちの資産運用にとって大事な制度、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の仕組みが変わります。しかも22年だけで、3つも大きな改正点が…。私たちが損をせず、制度を十二分に生かして働いていくために必要な「仕事とお金と制度」の基本を月ごとに取り上げていく連載「ハタラク×お金カレンダー」。ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子さんが解説します。

 2022年は「iDeCo(イデコ)大改正」の年です。iDeCoとは個人型確定拠出年金の通称で、老後の公的年金を補完する私的年金をつくるために有効な制度です。

 今年の改正内容を表すキーワードは、「長生き」と「多様性」。iDeCoへの加入時や、年金としての受け取り時の選択肢が広がり、制度の使い勝手がどんどん進化していく印象です。具体的な改正内容と、それが私たちにどう影響するのかを確認していきましょう。

iDeCoの改正で、老後資金をつくるための選択肢が広がる
iDeCoの改正で、老後資金をつくるための選択肢が広がる

【22年4月~】受け取り開始が75歳まで延ばせるように

 iDeCoは「老後のための」制度。掛け金が所得控除の対象になり節税メリットを受けられる半面、受け取り開始は最短でも60歳からで、それまでは原則として出金できないというのは皆さんも知っての通りです。

 そしてもう一つ、「70歳まで」というルールもありました。受け取らずになるべく長く運用を続けたくとも、70歳には受け取りを始めなければならなかったのです。

 4月の改正で、受け取りを始める時期の選択肢が「60歳から75歳になるまで」に拡大されました。最短の60歳で受け取りたい人にとっては、今までと何も変わりません。希望する人だけが、75歳まで延ばせるようになったのです。

 iDeCoの資産を投資信託で運用していた人は、60歳以降、ちょうど受け取りたいタイミングで値下がりしている可能性もあります。そんなときも、最大で75歳まで受け取りを延期できるので、運用を続け、再度の値上がりに期待して待つ時間を長く取れますね。

 ただし、注意点はあります。75歳まで、引き続き利益に税金がかからない状態で運用を続けられるのですが、その間も残高がある限り、口座管理の費用を払う必要があります。新たに掛け金を入れ続けている間は、その掛け金が所得控除の対象になる節税メリットが大きいので、せいぜい月に数百円程度の口座管理費用は気になりません。しかし、掛け金の拠出が終了して以降の期間は、口座管理費用のぶんだけマイナスになります。

 なお、iDeCo以外に公的年金も、22年4月の改正で、75歳まで受け取り開始を延期(繰り下げ)できるようになりました。こちらはiDeCoと異なり手数料負担はなく、待てば待つほど増額される仕組みなので、積極的に繰り下げたいですね。

 自分のワークスタイル・ライフスタイルに合わせた受取時期を選択していきましょう。