この連載では毎月初めに、前月の金融マーケットで起きたこととその理由を、分かりやすく解説。2021年11月末に発生した「オミクロンショック」で世界の株式市場は急落しましたが、12月に入ってからは全般的に回復。しかし、そこにはプロの目から見ると「静か過ぎて気持ち悪い」と見える側面もありました。一方、投資している日本の個人も多いトルコリラが急落する騒ぎも。一体何が起きていたのでしょうか?

【株価】オミクロンショックからは早期に回復

 2021年12月の金融マーケットは、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」が11月末に報告されたことで起きた混乱が、全体的に落ち着いていく流れだったといえる。特に米国株相場の回復には勢いがあり、12月末ごろにはニューヨーク・ダウ工業株30種平均(ダウ平均)が史上最高値を更新している。

 オミクロン株の登場以降、再び米国も感染拡大に見舞われている。それにもかかわらず、12月時点までは、米国経済が回復する流れが続いた。引き続き米国経済の強さは、世界の中でも際立っているといえる。日本経済も、夏にピークを迎えた新型コロナウイルスの第5波が過ぎた後は勢いよく回復しているが、米国とは差がある。

 マネックス証券専門役員の大槻奈那さんは「日本でも既存の大手企業の利益は伸びていますが、新たに上場してくる新興企業の数が少ない。米国市場ではIPO(新規公開)株の数が昨年1000社を超えて史上最多となるなど、新しい力も取り込んで、より経済が活性化している状況です」と語る。

米国株は11月末の急落からV字回復し、再び史上最高値を更新。一方日本株も11月末からは回復したが、勢いでは米国と差がある
米国株は11月末の急落からV字回復し、再び史上最高値を更新。一方日本株も11月末からは回復したが、勢いでは米国と差がある

 しかし、そんな勢い付いた米国のマーケットにも、プロの目から見ると気になる点があるという。