「ひふみ投信」の運用会社であるレオス・キャピタルワークスが、新しいバランス型投信の運用を始めた。一般的なバランス型投信とは性質の異なるユニークな投信だ。そもそもバランス型投信とは何か、そして、新しいバランス型投信の特徴について、責任者である著名ファンドマネジャーの藤野英人さんに聞いた。

 「ひふみ投信」を知っているだろうか。運用資産の規模は6000億円を超える(※1)、日本屈指の人気投資信託だ。運用会社はファンドマネジャーの藤野英人さんが率いる、レオス・キャピタルワークス。同社がこの3月30日に、「バランス型投信」の運用を始めて話題になっている。バランス型投信とは、1本の投信の中で株式や債券など複数の資産に分散投資するタイプの投信のこと。

 レオスがこれまで手がけてきた「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみワールド」などの投信は、どれも株式に100%投資し、どんな銘柄(企業)を選ぶかで勝負する投信だ。これに対し、バランス型投信というのは、銘柄選びよりも「資産配分(アセット・アロケーション)」で勝負するタイプの投信で、やや畑違いにも見える。

 藤野さんに「ひふみのバランス型投信」の特徴と、分散投資に関する考え方について聞いた。

※1 運用内容が同じ「ひふみプラス」などと合計した純資産総額

「みんなが投資をしないと、資産格差が大きく広がってしまう」

レオス・キャピタルワークスの創業者で、会長兼社長CIO(最高投資責任者)の藤野英人さん
レオス・キャピタルワークスの創業者で、会長兼社長CIO(最高投資責任者)の藤野英人さん

 「私たちがバランス型投信の発売を決めたのは、2019年に注目された『老後2000万円問題』がきっかけです。あの騒ぎを経て、世の中の投資リテラシーは私たちが想像する以上に低いと痛感しました。このままでは、10年20年たっても、投資をするのはごく一部の人にとどまってしまう」と藤野さんは危機感を募らせる。

 「しかし今の経済環境では、投資をしないことのリスクは大きい。今、投資をするという決断をしたかしないかで、将来に経済格差が生じ、多くの老後難民が発生する可能性があると危惧しています。

 そこで、今までのひふみ投信やひふみワールドよりも、多くの人にフィットする投信として、バランス型の『まるごとひふみ』『ひふみらいと』を始めました」

「ドキドキし過ぎない」投信の必要があった

 「私たちは今まで、日本株投信の『ひふみ投信』や『ひふみプラス』(※2)、世界株投信の『ひふみワールド』を提供してきました。しかしこれらの投信を、自分の資産の何%くらい保有すればいいのかについては、提案ができていませんでした」。バランス型投信を始めた理由について、藤野さんはこう語る。

※2 ひふみ投信は直販、ひふみプラスは証券会社や銀行で買える投信。どちらも運用内容は同じ

 「自分の資産形成をトータルで考える場合、日本株投信や世界株投信はあくまで『部品』です。私たちはいい部品を提供している自信がありますが、部品をどう組み合わせるかは自分で考えなければならない。このせいで、多くの人が投資を始める決断ができないままでいるのだと痛感しました。

 株式は本来、長期投資に最も向いた資産であり、年金資金などの運用でも必ず中核に据えられています。しかし、下がるときは大きく下がる性質があるので、多くの人にとっては『ドキドキし過ぎる』資産でもある。

 誰もが長期保有を続けるためには、値動きの異なる資産を組み合わせて、短期的な値動きが小さい資産構成をつくったほうがいい。そのために用意した『ドキドキしない選択肢』が、今回のバランス型投信である『まるごとひふみ』と『ひふみらいと』(※3)なのです」

※3 まるごとひふみは一部のネット証券や銀行などで販売、ひふみらいとは直販

 さて、ひふみのバランス型投信だが、実はバランス型投信の中でもかなり珍しいタイプだ。まずは他のバランス型投信との違いを見てみよう。