スケジュール表を真っ黒に埋めるのはやめよう

―― 「計画された偶然性」とは、私たちの生活でいうと、どういったことなのでしょうか?

鎌田 例えば、朝起きてから寝るまでの予定を埋めるのではなく、24時間の中にぽっかりと「何もしない時間」を用意しておくんです。

 勉強熱心な人ほど空き時間を利用して本を読んだり、音楽を聴いたり、人と会っておこうとするものです。それはもうやめましょう。

―― 「スキマ時間の活用」を意識している人は多いと思いますが、空き時間には予定を入れないほうがいいのでしょうか?

鎌田 今の世の中、「手帳が真っ黒でないと安心できない」という人は多いんです。とくに独身の若い方を見ていると、ランチや夕食を誰と食べるかまで、細かく1週間分の予定を立てていることがあります。休日の予定も旅行やイベントで埋めてしまう。

 それをやめて、1週間のうちの1日、1日のうちの2時間程度は「偶然が起きてもいいようにしておく」。これが「計画された偶然性」です。そこで何が起きるのか、偶然性を呼び込むわけですね。そうすると偶然、書店で素晴らしい本を手に取ったり、街で思わぬ出会いがあったりして人生が豊かになっていきます。つまり「計画された素敵な偶然性」なんです。

手帳を予定で埋めることをやめ、「計画された偶然性」を楽しもう
手帳を予定で埋めることをやめ、「計画された偶然性」を楽しもう

―― 自身が、偶然性を受け入れることで感じた変化はありましたか?

鎌田 以前は僕も多くの本を読むために、「速読法」や「読書術」について書かれた本を計画的に読破し、満足していましたが、計画通りに読書することを重視するあまり、ふと気づくと人間の本質を語った古典や文芸書をほとんど読んでいない……ということがありました。研究にしても綿密な計画を立てていましたが、あるときからそれをやめました。

 そうすると、「面白い仕事・新しい関心は人が持ってくる」と気づきました。僕は小学生のころ、ピアニストを目指すほどクラシック音楽が好きでしたが、あるときレコード店に入ったらジャズが流れてきました。「この音楽は何だ?」と驚き、店員に尋ねて、ジャズレコードを買って帰りました。大人になってからも、僕は九州で火山の研究をしていましたが、あるとき京都の研究者がふらっと訪ねてきてくれた。そこから共同研究が始まり、その成果が学会で受賞したことがあります。オープンマインドでいると、「普段の自分のフィールドと違うものでも、いいものはいい」と素直に受け入れられ、偶然が豊かな人生をつくってくれます。

 これが自分だけで計画すると、そうはいかない。なぜなら、人は成功体験から抜けられないんですね。例えば、僕なら「このテーマで本を書いたら売れた」とか「この話をすると講演会に人が集まる」とか2匹目のドジョウを狙ってしまう。依頼する側も同じようなテーマで頼むようになり、いわば縮小再生産を繰り返すだけになりがちです。これが資本主義に基づいた行動様式なんですが、それでは素敵な偶然性が入りません。今こそ必要なのは、「成功体験を捨てる学び」なんです。

 >>次回は「成功体験を捨てる学び」について、さらに詳しく聞きます。

取材・文/都田ミツコ 写真/行友重治(鎌田さん)、PIXTA(イメージ写真)