「超想定外の時代」を生き抜くには、「今までとは違う視点の学びが効果的」だと京都大学名誉教授の鎌田浩毅さんはいいます。しかし、「学びたくとも時間がない」と悩む人も多いのではないでしょうか。勉強時間を確保するための時間術について聞きました。

自分の「ゴールデンタイム」を知り、死守しよう

日経xwoman編集部(以下、――) 前回は「読書」について、本の選び方や読み方のポイントを教えてもらいました。今回は、仕事や子育てで忙しい読者のために、勉強時間をつくる方法について教えてください。

 これまで鎌田さんご自身も火山研究や大学の講義に加え、書籍の執筆や講演活動などを精力的に行ってきました。忙しい中でどうやって勉強時間を確保していたのですか。

鎌田浩毅さん(以下、敬称略) まず、勉強時間をたくさん確保する必要はありません、なぜなら、人間の頭が本当にフル回転するのは、1日に1時間ぐらいだからです。勉強のために読書をしたり、新しい科目を学び始めたり、クリエーティブなことに頭を使える時間は限られています。その1時間が自分にとっての「ゴールデンタイム」です。それを1日の中のどこかの時間帯で、毎日必ず持つことが勉強を続ける鍵となります。

 そのためには、自分の頭が一番働く時間帯を知ることが必要です。同じ1時間でも頭がさえているかどうかで、勉強の効果が大きく異なりますからね。

 僕の場合はどちらかというと朝型ですが、毎日同じ時刻に机へ向かうわけではありません。同じ時間に勉強することは立派ですが、例外があってもかまいません。時に規則を破る楽しみを感じることも、勉強を長続きさせるテクニックの1つです。

―― 1日に1時間ではなく、1週間のどこかで7時間まとめて勉強するのはどうでしょうか?よく受験勉強などで「1日に何時間も勉強した」と競い合った読者もいるかと思います。

鎌田 それはお勧めしません。1時間以上勉強すると、頭が疲れてしまって翌日からの働きが鈍くなります。1日に1時間のゴールデンタイムは増やせません。そもそも頭は常に休息と活動のリズムを繰り返すことで、もっともよく働くものだからです。

 だからこそ、毎日1時間の「ゴールデンタイム」を継続することが大事です。少ないと感じるかもしれませんが、1時間×365日ではすごい蓄積になります。

京都大学名誉教授 鎌田浩毅さん 勉強時間は1日1時間でいい
「ゴールデンタイムが終わったら、単語を暗記したり、ノートのデータを整理したり、さほど頭脳労働をしなくて済む勉強に切り替えましょう」

―― 1時間だけだと物足りなく感じる人もいるかもしれませんね。

鎌田 そう、それがとても大切なんです。1時間で終わりだと「もっと勉強したいのに」「もっといろいろな本が読みたいのに」と、モチベーションが上がるでしょう。最高のグルメがおなかを空かせることであるのと似ていますね。いつも満たされていると、それ以上の知的好奇心が生まれません。

 僕は「呼び水法」と呼んでいますが、「もうちょっと勉強したかった」と物足りなさを感じるところでやめて、次の日に勉強するとスッと頭に入ります。1時間で切り上げるからこそ、365日続けることができるんです。5時間も勉強したら、翌日はもうやる気がなくなってしまうと思いますよ。

 そのため、勉強する時はタイマーをかけるといいですね。「1時間しか勉強できない」と思えば集中し、一生懸命になれるはずです。僕はキッチンタイマーなんかを使います。