連載最終回のテーマは、鎌田さんの専門分野である火山と地震について。10年前の東日本大震災を機に「大地変動の時代」に入った日本には、首都直下地震や南海トラフ巨大地震など次の超弩級(ちょうどきゅう)の地震、富士山噴火などの危機が考えられるといいます。激動の時代を生き抜くためにはどうすればいいのかを聞きました。
南海トラフ巨大地震は2030~2040年に起きる確率が高い
日経xwoman編集部(以下、――) 連載の最終回は鎌田さんの専門である地震と火山について教えてください。現在の日本では地震や噴火などのリスクはどのぐらい高まっているのでしょうか?
鎌田浩毅さん(以下、敬称略) 2011年3月の東日本大震災以降、日本では「動く大地の時代」が始まりました。1000年ぶりに日本全体が活動期に入ったのです。日本のどの場所も地震から逃れることはできません。
また、残念ながら地震が何月何日に起きるという「予知」は、科学的にできません。現在、「予測」ができているのは、南海トラフ巨大地震が2030~2040年に起きる可能性が非常に高いということです。
南海トラフ巨大地震が富士山の噴火を誘発するとも予測されています。そして首都直下地震はいつ起きてもおかしくない状況です。
―― 首都圏でも地震が起きるのですか。
鎌田 東日本大震災を契機に、日本列島全体の地盤に今までになかった「ひずみ」が生まれました。それによってこれまで地震の少なかったところでも地震が起き始めたのです。このような地震を「誘発地震」といい、特に関東・東北・北海道を含む「北米プレート」の中でこれが10年以上は続くと考えられます。「誘発地震」は直下型の地震なので、もしこれが首都圏の地下で起き「首都直下地震」となると、甚大な被害が出るでしょう。
国の中央防災会議は、首都圏でM7.3の直下型地震が起こった場合、1万1000人の死者、95兆円の経済被害が出ると想定しています。
また南海トラフについて、政府の地震調査委員会は、今後30年以内に70%から80%の確率で発生するとしています。具体的には、東日本大震災よりもやや大きいM9.1という巨大地震と、高さが最大34メートルの津波が一緒に襲ってくるのです。また、その発生時期は2035年の前後5年と予測されているので、私は分かりやすく2030年代に起きると警告しています。