「脱成長」を暮らしに取り入れるヒント3つ

(1)「40歳」を機に、キャリアに休止符を打ってみる

 「40歳定年制」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

 これは東京大学大学院教授の柳川範之さんが提唱している考え方です。

 「40歳でリタイアしよう」という意味ではなく、「70代や80代になってもイキイキと働くために、40歳くらいでいったん区切りをつけよう」というアイデアです。人生100年時代、75歳まで働くとすれば40歳時点でも、まだ35年もの期間を働き続けることになります。40歳くらいで立ち止まり、これからのライフキャリアについてじっくりと考える時間を確保しようということです。

 僕自身は4年前、ちょうど40歳のときに40歳定年を経験しました。当時勤めていたフィジーの会社を退職し、1年間、家族との時間をたっぷりと過ごしました。離職中は完全に子ども中心の生活にシフト。日々、子どもたちに振り回され続け、いろんな気づきがありました。「仕事」「趣味」「家族」「学び」「社会貢献」「友人関係」「育児」「健康」など、さまざまな分野で価値観をアップデートできました。特に仕事面では、「いつでも、どこでも働ける」という労働環境を求めていることに気づきました。離職していたからこそ、現実的な落としどころではなく、自分の本当の理想に気づけたのだと思います。

 離職中は想定外の気づきのオンパレード、点と点が線でつながる感覚をたくさん味わえました。時間に追われる生活をしているときは視野が狭くなりがちで、つながるべき線を発見できないこともあるのだと感じました。

 1日でも、1週間でもふと立ち止まってみると、新たな気づきが生まれるものです。僕自身は日本でサラリーマンをしていた3年間、1年に1度だけ取得できる9連休を活用し、海外旅行をしていました。その旅先での出会いがキッカケで、世界一周旅行や海外移住という選択肢に気づくことができました。

(2)「お金」を過大評価しない

 脱成長というと、収入が下がり、収入面での不安を想起する人がいるかもしれません。言うまでもなく、お金は大切です。ただ、必要以上にお金を過大評価してはいないでしょうか。

 そんなときは、少し冷静になってお金よりも大切なものを書き出し、価値の配分が何パーセントになるか考えてみてください。アセット・アロケーション(資産配分)のように円グラフにして「見える化」してみると、自分にとってのお金の価値を認識しやすくなります。家族や健康など、当たり前にあることに改めて感謝できたり、大切にしようと思えたりします。

永崎さんの「価値観の配分」。「家族」「身体的健康」「精神的健康」が大きな割合を占める
永崎さんの「価値観の配分」。「家族」「身体的健康」「精神的健康」が大きな割合を占める

(3)居住地を変えてみる

 新型コロナウイルスの感染拡大によるリモートワークの普及とともに、「地方移住」や「二拠点生活(デュアルライフ)」「多拠点生活」など、「どこに住むか」が自由化されてきています。

 僕自身はフィジーに移住し、のんびりしたフィジー人たちと寝食を共にすることで、大阪でサラリーマンをしていたときの時間に追われる感覚や、成長圧力というストレスから解き放たれました。ただ、ずっとフィジーにいると、のんびりした時間の流れから次の行動を起こすことが難しく、それはそれで「このままでいいのだろうか」という不安にも襲われるようになりました。

 そこでフィジーと日本を行き来するデュアルライフを開始し、緩急のバランスを取るようになりました。新型コロナウイルスの流行がなければ、デンマークでも暮らし、さらなる価値観の変化を感じていたでしょう。日本人はせっかち、フィジー人はのんびり、デンマーク人はその中間くらいという生活スピードです。その違いを味わうのも楽しいものです。

 日本では特に都市圏で仕事に励んでいると、知らず知らずのうちに「成長必須モード」になり、時間に追われる生活が当たり前になりがちです。住む場所を変えると、その土地で出会う人も必然的に変わり、価値観のマンネリ化を脱する機会に恵まれます。