新型コロナで世の中が新しい生活様式へシフトしているこの時期に、消費者庁長官を務める伊藤明子さん。日本の消費の未来、SDGsへの取り組み方、そして自身の女性としての葛藤、思いなどを全4回でお届けします。第1回は、SDGsによって変わりつつある消費者意識、消費者庁の役割、企業経営のあり方についてです。

―― 国土交通省の住宅局長だった伊藤さんが2019年に消費者庁の長官に就任して約2年。消費者行政のかじ取り役として、消費者を取り巻く環境をどのように見ていますか。

伊藤明子さん(以下、伊藤) 消費者庁は、消費者の安心・安全を確保するために、縦割りだった消費者行政を一元的に管理する組織として2009年に設立されました。

 設立当初は、食品偽装問題や危険物質の混入事件、悪質商法などから消費者をどうやって守るのかが、取り組みのメインでした。しかし、時代の流れとともに、弱者である消費者を守るだけではなく、消費者自身も自分で考え、選び、いい消費ができる「消費者教育」に重点を置くようになりました。

SDGs目標の12番目は「つくる責任、つかう責任」

 その大きなきっかけとなったのが2015年、国連の「持続可能な開発サミット」で採択された、持続可能な開発目標(SDGs)です。SDGs目標の12番目に「つくる責任 つかう責任」がありますが、後者の「つかう責任」が、消費者庁が見ていく部分になります。つかう側、つまり消費者側にも責任がある。持続可能な社会を実現するには、つくる側の努力だけではなく、消費者側も考えて行動する必要があるというわけです。

 国内に目を向ければ、GDP(国内総生産)のうち5割以上が「家計消費」で占められています。つまり、自分たちがどういう消費をするかで、経済や社会が決まる。いいものを選び、消費することが、ひいてはいい経済や社会をつくることにつながるのです。そのためにも、消費者と企業の「協働」が求められています。

 代表的な例として、「プラスチックごみ削減」や「食品ロス削減」の推進が挙げられます。

伊藤明子消費者庁長官
伊藤明子消費者庁長官