「こんなに下手なのに、俳優をやっていちゃいけない」

―― 仕事をやめたいと思った理由は何だったのですか?

吉田 最初にやめたいと思ったときは、共演した俳優さんと自分を比べて、自分の未熟さに落胆したため。小劇場に出演していた頃です。こんなに魅力的な俳優がいるなら、私なんていなくてもいいんじゃないかって、打ちひしがれました。

 でも、ちょうどその頃、「羊ちゃんにやってほしい役があるんだ」という話が来て。「ああ、私はまだこの世界にいていいんだ」と、思い直すことができました。

 次にやめたいと思ったのも、自分の演技が理由でした。2018年に私が主演を務めた映画『ハナレイ・ベイ』の撮影中です。このとき演じたサチは、一人息子の死後、彼への嫌悪と愛情の狭間でもがき苦しむ母という、とてもナイーブで難しい役でした。自分の表現力にどうしても満足できず、嫌気がさして、「こんなに下手なのに、俳優をやっていちゃいけない」「これが終わったら、この仕事をやめなきゃいけない」という気持ちになっていました。

 でも、そんな葛藤の末に出来上がった作品を見たら、スクリーンに、今までに見たことのない表情をしている自分がいたんです。その時、「この先の自分を見てみたい」と思いました。次の作品では、違う側面の自分を発見できるのではないかって、また夢を見ることができるようになりました。そういった意味で、俳優として生きる原動力を再び与えてくれた作品でした。

「葛藤の末に出来上がった作品を見たら、スクリーンに今までに見たことのない表情をしている自分がいたんです」
「葛藤の末に出来上がった作品を見たら、スクリーンに今までに見たことのない表情をしている自分がいたんです」