コロナ禍でままならなかった海外取材。池上さん、増田さんが2022年10月に2年半ぶりに訪れたアメリカで気づいたことを聞きました!

物価高のニューヨーク、飲食店の時給が3000円!

編集部(以下、——) 昨年10月にお2人は中間選挙の取材で、2年半ぶりにアメリカへ行かれたのですよね。いかがでしたか?

※カンザスとテキサスは増田さんのみ訪問
※カンザスとテキサスは増田さんのみ訪問

増田ユリヤさん(以下、増田) 10月当時は1ドル約150円の円安でもあり、何もかも値段が高いことに驚きました。

池上彰さん(以下、池上) ニューヨークのマンハッタンだと治安上マストな四つ星ホテルが1泊・朝食なしで約500ドル、7万5000円と、とてつもない値段。五つ星になると1泊10万円はしていました。

治安的にマストな四つ星で朝食ナシ 1泊7万5000円
治安的にマストな四つ星で朝食ナシ 1泊7万5000円
ホテルの朝食は4500円。「約2週間の滞在の最後は、前日夜に買ったパンとジュースを部屋で食べていました」(池上)。写真/PIXTA

増田 テキサスやカンザスのホテルもNYほどではないとはいえ、1泊2万円弱でした。

池上 NYで人気のラーメン店に行ったら、ラーメンと餃子で合計4200円。さらに「サジェステッドチップ(チップ額のご提案)」を18・20・25%から選ぶ方式。私は真ん中の20%を選んだのでチップが840円、合計で5000円を超えました。そのときのレシートを持ってきましたよ。

ラーメン・餃子が5000円超! 
ラーメン・餃子が5000円超! 
マンハッタンの人気店「Momosan Ramen」でラーメン&餃子を頼んだら…。(1)餃子1800円、(2)豚骨ラーメン2400円、(3)チップ 840円
ロブスターパスタは「カードがクタクタになる」値段
ロブスターパスタは「カードがクタクタになる」値段

——「サジェステッドチップ」って、初めて知りました。

池上 キャッシュレスの支払いに対応した方法です。以前は10・15・18%だったのですが、人件費が上がってチップも値上がり、18・20・25%からの選択になりました。

——チップまで値上がりしているんですね。

池上 アメリカ政府はパンデミックのさなかに失業者への給付を大盤振る舞いし、多くの失業者が失業前より高い収入を得ていました。コロナ禍が落ち着いて給付も終わりましたけれど、飲食店には働く人が戻ってこない。結果、現在のNYの飲食店の時給は3000円がザラ。それでも人が来ないそうです。時給4000〜5000円払わないと。だからチップも20〜25%が当たり前になっちゃった。

増田 NYは物価が上がっているけれど、そこで働く人の給料も上がっているのですよね。大変なのはNYで働く日本人の現地駐在員。給料は上がっていないし、円建てで決まっているお給料がドルで支払われるから円安の影響をすごく受ける。

池上 彰さん
池上 彰さん

池上 昨年1月は1ドル約115円だったのが、私たちがNYへ取材に行った10月には1ドル約150円と急激に円安になっていました。その後、少々円高には振れましたけれど、日本人の若手駐在員からは「外食なんてできない」と聞きました。ひと月の家賃がいきなり10万円も値上がりしたそうです。

——日本でもこのところ物価の上昇で家計がとても厳しいですが、それでも前年比3%。アメリカの物価上昇率は7〜8%ですから、すごいですよね。そもそもなぜこんなに物価が上がっているんでしょうか。

池上 景気がいいからです。ただ、NYなど都市部にあるIT企業や金融業などは賃金をどんどん上げていますが、景気がいい業種ばかりじゃない。地域による格差も大きい。結局、バイデン大統領率いる民主党支持者が多い地域=都市部は給料が上がるが、トランプ前大統領の共和党支持者が多い地域は給料が上がらず、物価だけ上がっていて、政府への反発も大きい。分断が進んでいますよね。