ひとりでも孤立させない社会のシステムを

——もし身の回りの人や近親者が自殺したら、どう受け止めたらいいのでしょう。

増田 私の身近にもいますが、残された人がこうしたら防げたんじゃないかとか、ああしておけばよかったと思い悩んだり苦しんだりするのは当然です。無理は承知の上ですが、自分を責めないように、心の病気を患ってしまった結果なんだと考えるようにしてほしいと思います。

池上 フィンランドは国をあげて自殺予防対策に取り組んで、かつては高かった自殺死亡率を下げる成果を出したんでしょ?

増田 もともと生真面目な気質ですからね。そこは日本人と似ています。困難に耐える、根性で頑張るみたいな意味合いの「シス」という語がフィンランドを表す言葉と言われるくらい。冬は日照時間が短いなどいろいろな要素があるなかで、一生懸命どうしたらいいかを考えた結果、幸福度が高い国になったということなのでしょうね。税金は高いですが高福祉で、ひとり暮らしでも、孤立はさせない社会的なシステムを構築しようとしています

——野村総合研究所の調査では、「コロナ禍で孤独を感じることが増えた」と答えた女性は、ひとり暮らしと既婚女性が約65%と高く、「配偶者や同居相手が孤独の相談相手になるとは限らない」とも分析しています。

ひとり暮らしと既婚女性の約65%が「コロナ禍で孤独を感じることが増えた」
ひとり暮らしと既婚女性の約65%が「コロナ禍で孤独を感じることが増えた」
出所:野村総合研究所「新型コロナウイルス流行に係る生活の変化と孤独に関する調査報告」(2021年)

池上 そのとおりだと思います。家族がいるからこそ、逆にその中で孤独を感じるということもありますよね

「ねばならない」を外していきたいですね(増田ユリヤさん)、「同居家族がいれば孤独でない」とは限りません(池上彰さん)

増田 よく「家族だから気持ちが分かるでしょう」と言いがちですが、教師をしていたときに実感したのは、子どもの言動や思いを親は知らないということです。むしろ「全部を理解しているわ」なんて親が思っていたら、子どもは嫌でしょうし、夫婦の間でもそうだと思います。家族がいるからとか、友達が多いからといって孤独を感じないということではないですよね。むしろ、「結婚して家族をつくらなければいけない」といった、「ねばならない」を外したら、とても人生は楽になるんじゃないかという気がします。

英国に次いで世界で2番目! 2021年、「孤独・孤立対策担当大臣」が政府に置かれた
英国に次いで世界で2番目! 2021年、「孤独・孤立対策担当大臣」が政府に置かれた
出所:内閣府「孤独・孤立対策の重点計画概要」(2021年)より編集部が一部抜粋

池上 日本も国が孤独対策を始めました。孤独や孤立という問題に気が付いたことは一歩前進だと思います。社会福祉や相談する窓口があることで、なにがしかの支えになりますし、誰かが気にかけてくれていると思えると1つの救いになるのかなと思いますね。

もっと知りたい人におすすめ書籍
【池上さん推薦】
『孤独のすすめ 人生後半の生き方』
五木寛之著/中公新書クラレ
老年期に社会から取り残されるような孤独と不安を抱くのは当たり前。「老いても前向きに」の呪縛から自由にと説く。

『極上の孤独』
下重暁子著/幻冬舎新書
孤独=悪の風潮に違和感を抱き、ひとりでいる時間を愛する著者が、極上の孤独の味わい方とその効用を語り尽くす。

【増田さん推薦】
『「空気」を読んでも従わない 生き苦しさからラクになる』
鴻上尚史著/岩波ジュニア新書
死にたくなるくらいつらいときは「なぜそう思うのか」を考えるといいよと著者。心が楽になる、考える習慣を優しく指南。

『眠れぬ夜はケーキを焼いて』
午後著/KADOKAWA
オオカミの姿をした主人公は落ち込んだとき、さまざまな方法で自分を自分でいたわる。読むとほっとするマンガエッセイ。

構成/安原ゆかり 取材・文/中城邦子 写真/窪徳健作