諸外国の制度は?

── 世界では、戸籍制度がある国のほうが少ないとか……。

増田 日本と中国と韓国くらいですね。姓についても、夫婦別姓か、同姓か別姓を選べる選択制、あるいは両方の姓を列記する結合姓という国が多いです。

池上 戸籍制度がある中国や韓国も夫婦別姓ですよ。実は、かつては女性の地位が低く、妻が夫の戸籍に入ることができなかったからなのですが、結果的には夫婦別姓で世界の先端を走っているような感じです。

増田 フランスでは、夫婦別姓・同姓を選べることに加えて、法律婚・事実婚を選択できます。1999年にPACS(連帯市民協約)という制度が作られ、事実婚でも、法律婚と同様の権利が認められるようになりました。フランスはキリスト教国で、離婚は必ず裁判を経なければならず、成立するまでに2年前後かかるとか。そのため事実婚を選ぶ人が増え、夫婦同姓か別姓かで迷うこと自体が減っています。ちなみにPACSはLGBTの権利に配慮して生まれた制度です。

── 選択的夫婦別姓制を巡って国会が紛糾する日本って遅れすぎですね……。そもそもなぜ、日本では夫婦別姓が認められないのでしょうか。

池上 憲法には「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有する」とあるのですが、民法と戸籍法で夫婦は同姓であることを規定しています。

増田 夫婦別姓を選択できる制度改正の議論はずっとあるのですよね。96年には法務省の法制審議会が、夫婦の別姓を認める民法改正案を答申しています。

池上 ところが、自民党の事前審査で多数の反対の声が出て、結局、改正案の国会提出を断念しました。法制審議会の改正案が国会に出せないというのは、相当異例のことですよ。

── 現在も、男女共同参画担当大臣が反対派ですからね……。

増田 市民の側からは、夫婦の同姓を規定する民法は「…婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的な平等に立脚して、制定されなければならない」とした憲法第24条2項などに違反する不合理な差別だという訴訟が起こされています。

池上 サイボウズ社長の青野慶久さんも原告のひとりですね。戸籍上はパートナーの姓で、自分の旧姓を通称として使っています。お会いしたことがありますが、とてもリベラルな人で、サイボウズを女性が働きやすい会社にされましたよね。

── 青野さんは通称使用をしているため、海外出張時に青野姓で予約されたホテルで、パスポートの名前と違うので本人だと証明できず困ったそうです。

増田 旧姓を通称として使っている方たちは、似たような経験をされていると思います。そして日本では、女性が夫の姓に変える割合が9割以上ですから、姓を変えるために起きる不便や不利益は圧倒的に女性に多いのが現状です。このため、姓を選択できるようにすべきと、国連の女性差別撤廃委員会は過去3回、民法の改正を勧告しています。しかし、最新の第5次男女共同参画基本計画からは、「選択的夫婦別氏制度」についての文言が消えてしまいました。

池上 第4次計画までは検討するになっていましたから後退ですよね。選択的夫婦別姓は、同姓、別姓を本人の意思で選べる制度ですから、反対している人は、自分以外の人が姓を選ぶ権利を禁じていることになります。そんな権利があるのかと思ってしまいます。

増田 別姓にしたら家庭が壊れる、お父さんとお母さんの姓が違うのは離婚したみたいで子どもがかわいそうと。離婚であれ、事実婚であれ、子どもの成長を支える仕組みを整えることが大事と思いますが。

池上 地方ではまだ家制度の価値観が強いですよ。だから若い人が都会に出て地方の過疎化が進む一因にもなっているのじゃないかな。

夫婦同姓を命じる法律は「憲法違反」?
⇒憲法第24条(抜粋)、
□婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有する
□配偶者の選択、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないなどを根拠に、夫婦同姓を命じる法律は「憲法違反」と訴える裁判が進行中

「選択的夫婦別姓」とは?
⇒希望すれば、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度

夫婦別姓が認められたら、子どもの名字はどうなる?
⇒1996年の法制審議会の答申では、「婚姻の際に子どもの名字を決めておく」「子どもは全員同じ名字」という考え方を採択
夫婦別姓制度、どう考える?
※内閣府「家族の法制に関する世論調査(2017)」より「選択的夫婦別姓ができるように法律を改めたほうがいいか?」に対する回答。選択肢の文言は編集部抜粋
※内閣府「家族の法制に関する世論調査(2017)」より「選択的夫婦別姓ができるように法律を改めたほうがいいか?」に対する回答。選択肢の文言は編集部抜粋