自民党内からも選択的別姓を容認する案も

増田 自民党では稲田朋美議員が、独自案を出しました。夫婦は同一の姓にするが、役所に届け出れば、婚前の氏を使って住民票や保険証名といった、法的なものにも使えるようにするというものです。そんな中途半端なことをせず、選択的別姓OKと旗幟(きし)鮮明にすればいいのにと思いましたが、反対派が強い自民党で、彼女なりのギリギリの選択なのでしょうね。

池上 この案を出したために、彼女は保守派から見放されました。初の女性総理大臣を稲田にと言っていた安倍前総理が急に冷たくなったそうです。

── ただ今年は夫婦別姓に関して大きな前進も期待されているとか。

増田 最高裁が、夫婦同姓を規定している民法を「違憲」とする判決を出すかもしれません。

池上 2015年の最高裁判決では「合憲」という判断でしたが、裁判官15人中5人が違憲とし、女性裁判官3人は全員が違憲としています。

増田 男女同数実現の重要性を実感しますね。現在女性裁判官は15人中2人です。

池上 今回の判決が注目されている理由として、夫婦同姓に関する3つの事案を一括して大法廷で審理するということがあります。最高裁には、裁判官5人で構成する小法廷と15人の裁判官全員で構成する大法廷があるのですが、過去の判例を変更する場合は必ず大法廷で審理されます。そのため、「もしかしたら違憲判決が出るのでは」と見る向きがあるのです。

── 私たちができることは。

池上 最高裁の裁判官には国民審査があります。その際、選挙公報には裁判官の名前が、新聞には各裁判官の主な裁判での判決結果が出ます。「この人の判決はおかしい」と思ったら、×を付けて投票すればいいのです。国会議員については選挙区内の候補者の事務所に夫婦別姓に対する考え方を問い合わせて、自分の意見を伝える方法もあります。

増田 裁判官の国民審査は衆議院議員選挙と同時ですから、次回は今年の秋までのタイミングですね。

夫婦別姓を巡る事件簿
【1996年】
法務省・法制審議会が、夫婦別姓を認める民法改正案を答申
与党の事前審査で大反対され、法案の国会提出を断念(異例!)

【2011年】
事実婚のカップルらが「民法第750条は憲法違反」と訴える

【2015年】
最高裁が「夫婦同姓は合憲」とする初の判断(女性裁判官3人は全員が「違憲」判断!)
ただし、裁判官15人中5人は「憲法違反」とした

【2018年】
サイボウズ・青野慶久氏らが「ニュー選択的夫婦別姓訴訟」を起こす
現状、二審まで敗訴。最高裁に上告中

【2020年12月】
第5次男女共同参画基本計画が閣議決定
第4次計画にあった「選択的夫婦別氏制度」の文言が削られ、具体的な制度の在り方について「更なる検討を進める」と表現が後退

【2021年3月】
自民党の有志議員が「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」の設立を発表

【2021年度中】
夫婦同姓が違憲か合憲か、最高裁で判決が出る見通し(今ココ!)
審理が「大法廷」で行われることも注目ポイント
もっと知りたい人におすすめ書籍
【池上さん推薦】
『「一人で生きる」が当たり前になる社会』
荒川和久、中野信子著/ディスカヴァー・トゥエンティワン
20年後、人口の5割が独身者となる「ソロ化」が進む日本。一方で「集団の絆」の押しつけが強まる社会心理を解き明かす。

『憲法という希望』
木村草太著、国谷裕子対談/講談社現代新書
最高裁が夫婦同姓を規定した民法を合憲とした15年の判決の法的是非などに、憲法学者と気鋭のジャーナリストが踏み込む。

【増田さん推薦】
『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』
大塚玲子著/SB新書
「ふつうじゃない」家の子どもたちに取材したルポルタージュ。親が離婚や再婚、夫婦別姓を選んだ子どもの本音は? 悩みは?

『ステップファミリー 子どもから見た離婚・再婚』
野沢慎司、菊地真理著/角川新書
ステップファミリー(再婚家庭)で虐待される子どもたちの背景に、思い込みや旧態依然の制度が。真に幸せな家族観とは。
※この記事の内容は、2021年3月22日時点の情報です。

構成/安原ゆかり 取材・文/中城邦子 写真/窪徳健作