働き方の大変革が進む一方、非正規雇用者のコロナ失業など、負の側面もあらわに。二人のジャーナリスト、池上彰さんと増田ユリヤさんの経験を通して、未来につながる働き方を考えていきます。

特別対談 未来につながる働き方
「取材して書く仕事がしたい」と54歳でNHKを早期退職した池上彰さん、「組織に属するのは合わない」と考え、教員と取材の「ダブルワーク」を実践した増田ユリヤさん

二人にもあったストレスとの闘いの日々

編集部(以下、──) ジョブ型雇用、ギグワーク、70歳定年など、働き方が激変しています。今回はお二人の経験を通じて、未来につながる働き方について学ばせてください。まず池上さん、NHKを早期退職されたのですよね。

池上彰さん(以下、池上) 54歳で早期退職しました。『週刊こどもニュース』でお父さん役をやっている頃から本を書く仕事が来るようになり、書き始めたらテレビに出るよりずっと楽しくて。出版社の編集者には「食べていけませんよ」って心配されましたけど。

増田ユリヤさん(以下、増田) 「フリーはいいなあ」と私によく言っていらしたから、辞めると聞いたときは、まねするの? と。(笑)そういえば辞められてからは、以前のように高熱を出さなくなりましたよね。

池上 会社員時代と比べて確実にストレスが減りました。

── 経済的な不安は感じなかったのですか?

池上 なんとかなるかなと。でも辞めてみたらやっぱり不安にもなりましたよ。フリーは来た仕事を断ってはいけない、2度目はないからというアドバイスを実感したこともありました。

── 池上さんでもそんな時期があったのですね。増田さんは社会人になって以来、正社員になった経験がないとか。

増田 ないです。フリーが合っているというより、組織に属するのが合わないんです。人の言うことを聞けないので。

池上 あはは。見ていると本当にそう思う。

増田 大学を出て私立女子高で社会科の非常勤講師になったのですが、学校が荒れていて、最初の2年間でストレス性の体調不良はひと通り経験しました。「ここに一生いるのか」と思ったら絶望的な気分になって。新聞の求人広告を端から端まで探して「NHK横浜放送局のアシスタント募集」を見つけたのです。ただし、月4回1時間番組のリポーターの仕事で、月収は手取り3万6000円。必然的に二足の草鞋(わらじ)生活です。

池上 その頃、私はNHKの『ニュースセンター845』のキャスターで、以来、増田さんとは30年以上のお付き合いですね。

【お二人のキャリアヒストリー】
増田ユリヤさん
22歳 大学を卒業後、私立女子高校で社会科の非常勤講師
24歳 NHK横浜放送局のリポーターに。教員と取材のダブルワーク
27歳 体調を崩し休職。再度オーディションを受けテレビの仕事へ
29歳 学校からリストラ通告
35歳 契約社員として雑誌の編集長に。驚きのブラック職場
37歳 出版社を退社。自腹で初の海外取材へ。自著の出版と取材を続けながらテレビの報道番組に出演

池上彰さん
22歳 大学を卒業後、NHKに入局
28歳 報道局社会部で警視庁担当など。地獄の激務
38歳 ニュース番組のキャスターに。増田さんと出会う
43歳 『週刊こどもニュース』のお父さん役で人気者に
47歳 在籍中から自著を出版
54歳 NHK を退社、フリーのジャーナリストに
61歳 東京工業大学リベラルアーツセンター教授に就任