——ウクライナ難民はほとんど、女性と子どもですね。
池上 成人男性は出国禁止ですから。ロシアの軍事侵攻前に、ウクライナでは国民抵抗法という法律ができ、18歳から60歳の男性は、他国の侵略に対して戦わなければいけないのです。
増田 男性の難民は子どもか高齢者、あるいは持病がある人です。ハンガリーで、ウクライナとの国境近くの仮設診療所を取材しましたが、白血病ですぐに治療が必要な難民がいて、日本人医師が病院へ送り出していましたね。
——日本では「避難民」として受け入れていますが、「難民」とはどう違うのですか?
池上 難民条約によると、難民とは、人種や宗教、政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがあり、国外に逃れた人のこと。難民の受け入れは義務ではなく、各国政府が難民と認めた後に保護する義務が発生し、定住し、働いたり、生活支援を受けたりすることを認めます。日本では難民認定がとても厳しいため、ウクライナの人たちは、難民ではなく「避難民」として、一時的に受け入れますということなのです。なんだか、無理矢理な理屈ですけれどね。
増田 ウクライナの場合、海外で定住するより、帰国を希望する難民が大半だという点が、例えばシリア難民とは違うかもしれないですね。ハンガリーで取材したときも、「帰れるのなら危険でも帰りたい」とみなさん言っていました。