難民をどう受け入れるか考えるきっかけに

増田 「困っている人を助けよう」という発想より、「難民は危険だ、犯罪が増える」とマイナス面をまず指摘し不安視する意見が目立ちます。海外から日本に来た人たちの人権や気持ちに配慮しない対応が、今まで多かったのではないでしょうか。出入国在留管理局の施設で死亡したスリランカ人女性の事件で、これまでのやり方に見直しを求める声が上がっていますね。

——日本に来る難民申請者は実は就業目的の人が多く、認定率が少なくなるのは仕方がないという意見もあります。

池上 難民支援をしている会の方からもそうした声を聞きました。実際、就労目的の難民申請を抑制する制度変更を18年に行った途端に、難民申請は激減しました。それは1つの現実としてあります。一方で、増田さんが言ったように、民族や文化が自分たちと異なり、よく分からないからという理由で、支援よりも、まず否定から入ってしまう傾向もあると思います。

増田 国同士の問題で、難民認定ができないケースもあります。

池上 クルド人がそうですね。埼玉県蕨市にワラビスタンと呼ばれるエリアがあります。トルコで迫害を受けて逃げてきているわけですが、トルコ政府は「クルド人への迫害はしていない」と言っている。彼らを難民として認定すると、日本とトルコとの関係が悪化するので、人道的な立場から日本にいることは認めるけど、難民として認定しないという、宙ぶらりんの状態となっています。

——ヨーロッパで、15〜16年にシリア難民が急増したときに、増田さんはたびたび取材に行かれました。

増田 ドイツの対応は見事でした。1年間に100万人以上の難民を受け入れたのに、道で寝ている人がほとんどいなかった

池上 当時のメルケル首相が難民を全面的に受け入れる方針を決め、各州に受け入れ人数を割り振りました。難民申請中は1人に月5万円を支給し、ドイツ語も教える。至れり尽くせり。

増田 そうした対応に不満を感じるドイツ人もいて、極右政党が一定の勢力を伸ばすことにもつながってはいます。

池上 ドイツまで自力で逃げてくる体力がある難民が、言葉も話せるようになれば、いい労働力になる。実はドイツ企業にはそうした計算もあるんだよね。

増田 外国人を受け入れるのは怖い、でも労働力としては欲しいでは成り立ちませんよね。難民として日本に定住を希望する人たちに、どう対応するか、私たちもこれをきっかけに考えていかなくてはと思います。

池上 ウクライナ人は歓迎するのに、ミャンマーで迫害されているイスラム系少数民族ロヒンギャはなぜ受け入れないの? ということも考えたいね。

「よくわからないから拒否」でいいのでしょうか(増田さん)、日本はウクライナ人は歓迎し、ロヒンギャは受け入れていません(池上さん)
池上彰さん、増田ユリヤさん