——核兵器が「小型」化して、「使いやすく」なっていると新聞記事にあったのですが…。
池上 第2次世界大戦中に広島と長崎に投下された核爆弾の威力を見て、戦争に勝利するためにはこれからは核兵器だ、より威力のあるものを作れとアメリカと当時のソ連が競争し、お互いの国や都市を、一発ですべて消滅させるくらいの威力のある核兵器が生まれました。これを「戦略核兵器」と呼びます。
でも、それで撃ち合ったらどちらも全滅してしまうから、実際には使えない。そこで逆に威力を小さくして、例えば敵の部隊1000人がいる場所だけ破壊し、街全体を壊滅させない核兵器が開発されたのです。これを「戦術核兵器」と呼びます。戦略と戦術の違いですね。
——戦術核兵器は広島・長崎の原爆よりも威力は小さい?
池上 はるかに小さいです。
——そもそも世界に核兵器はどのくらいあるのですか。
増田 最も多いときは世界に約7万発あったと言われています。その後、アメリカのレーガン元大統領と旧ソ連のゴルバチョフ書記長が数を減らす約束をし、「中距離核戦力(INF)廃棄条約」が調印されました。1991年に「戦略兵器削減条約(START)」や2010年に「新START」と、アメリカとロシアは核軍縮に動き、数は減っていたのですが…。
池上 トランプ前大統領がINF廃棄条約を破棄しちゃった。ロシアも「じゃあ、うちも約束を守る必要はないよね」とまた核兵器を増やし始めた。
増田 トランプ前大統領の言い分は「中国がミサイル開発をしているから」でした。
池上 アメリカとロシアがお互いに核兵器を減らそうと言っている間に、中国がどんどん核兵器を増やしていた。中国からアメリカまで届く大陸間弾道ミサイルを、天安門広場での軍事パレードで見せていますし、アメリカにとって脅威です。
——今、核兵器保有国は?
増田 公式にはアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国です。それ以外にインド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルも核保有国です。
池上 イスラエルは、持っているとも持っていないとも言わない、「曖昧戦略」を取っていますが、持っていますね。