——つまり、核拡散防止条約に加入しなければ核兵器を造れるし、加入してもこっそり造っていた国がある…。

増田 違反した場合の取り決めや罰則がない穴だらけの条約なのです。元外務省の軍縮・不拡散の専門官で現在、長崎大学教授の西田充さんに取材したところ、条約の発効以降で、世界の情勢は今、最も不安定な状態にあるとおっしゃっていました。

池上 ロシアが核を威嚇に使いながらウクライナへの侵攻を進めているのを見たら、核保有国は手放したくなくなるし、核を持っていない国もどうしようかと動揺しますからね。

増田 だからこそ、今回の侵攻をロシアが勝利した形で終わらせてはいけないと、専門家や欧米の国々は見ているわけです。

池上 ロシアが勝利すれば、核の脅しは効果があるということになってしまう。核が平和のために必要なんてことになってはいけないわけです。

増田 核兵器に関する国際条約にはもう1つ、「核兵器禁止条約」があります。これはあらゆる核兵器の開発・保有・使用を禁止する初めての条約で、2021年1月に発効しました。国連加盟国の6割にあたる122の国と地域の賛成で採択されましたが、核保有国5カ国は条約に否定的です。

 アメリカの核兵器によって守られている日本は現状、この条約に参加できていないものの、世界唯一の被爆国として絶対に核兵器を廃絶するのだという立場で、どのような条文を書き加えるべきか提案するなど、できることはあるはずです。

池上 原爆はその時点の被害が甚大な上、後世に影響が残ります。それをきちんと伝えていけるのが、日本です。

 8月にニューヨークの国連本部で開かれる核拡散防止条約の再検討会議には、岸田文雄首相が日本の首相として初めて参加します。衆院広島1区の選出で、これまで核廃絶への取り組みを語ってきた岸田首相。日本が果たすべき役割を頑張って見せてほしいですね。

唯一の被爆国としての日本の役割は大きいです(増田さん)、核廃絶に取り組む岸田総理の頑張りに期待(池上さん)
池上彰さん、増田ユリヤさん