2021年に読んだベスト本

増田 子どもの頃、『小さい魔女』という童話が大好きで、紙粘土で人形を作り、人形劇にしようとしたこともあります。最近、思い出して買ってみたら、やはり大好きなお話だなあと。新刊ではないですが、今年買った本ベスト3の1冊です。

池上 私は『実力も運のうち 能力主義は正義か?』が、今年のベスト3の1冊です。東工大の教え子との読書会の課題図書にもしました。著者はハーバード大学のマイケル・サンデル教授で、「運も実力のうち」って言うけれど、本当は「実力も運のうち」なんだ、難関大の学生は学べる環境で育つ幸運に恵まれたんだ、わきまえろという趣旨の本。「頑張ればなんでもできる」と、暗に低学歴の労働者を見下した高学歴の民主党の指導者たちが、トランプ元大統領の支持層を生んだのだと書いています。

増田 『地図とグラフで見る第2次世界大戦』も買ってよかった本です。8800円と結構思い切った値段でしたが、後悔してません(笑)。グラフィックが工夫されていて、地図や数字が実に見やすい。高校で世界史を教えていたとき、分かりやすい地図や写真があると、生徒たちががぜん興味を持ってくれることに気づいて、この手の海外の翻訳本はかなり買いました。

池上 翻訳本といえば、『三体』も今年のベスト3の1冊。世界で2900万部突破の中国のSF小説です。冒頭が文化大革命の話から入るんですよ。「えっ、中国でOKなのか」と思うじゃないですか。実は、中国で出版された版では文化大革命の話が後のほうにさりげなく入っているそうです。中国共産党の幹部はSF小説なんて読まないので、毒が紛れ込んでいることに気が付いていないんだって。実は私、中学生時代はSFマガジンを毎月購読していたSFファンなんですよ。

池上さんの「2021年に読んだベスト3冊」
『三体』劉 慈欣(りゅうじきん)著、大森 望他訳/早川書房
『実力も運のうち 能力主義は正義か?』マイケル・サンデル著、鬼澤 忍訳/早川書房
『つながり続けるこども食堂』湯浅 誠著/中央公論新社

(左)『三体』劉 慈欣(りゅうじきん)著、大森 望他訳/早川書房 (中央)『実力も運のうち 能力主義は正義か?』マイケル・サンデル著、鬼澤 忍訳/早川書房 (右)『つながり続けるこども食堂』湯浅 誠著/中央公論新社
(左)『三体』劉 慈欣(りゅうじきん)著、大森 望他訳/早川書房 (中央)『実力も運のうち 能力主義は正義か?』マイケル・サンデル著、鬼澤 忍訳/早川書房 (右)『つながり続けるこども食堂』湯浅 誠著/中央公論新社
 『三体』は中国のSF小説。上下巻×3部作の大長編ですが、SFファンとしてはたまらない面白さ。『つながり続ける こども食堂』は、こども食堂が貧困対策のためだけにあるのではなく、地域で人を孤立させない活動だと教えてくれました。

増田さんの「2021年に読んだベスト3冊」
『夢のビッグ・アイデア カマラ・ハリスの子ども時代』ミーナ・ハリス著、アナ・R・ゴンザレス絵、増田ユリヤ訳/西村書店
『地図とグラフで見る第2次世界大戦』ヴァンサン・ベルナール、ニコラ・オーバン共著、ジャン・ロペズ監修、太田佐絵子訳/原書房
『小さい魔女』オトフリート・プロイスラー著、ウィニー・ガイラー絵、大塚勇三訳/学研プラス

(左)『夢のビッグ・アイデア カマラ・ハリスの子ども時代』ミーナ・ハリス著、アナ・R・ゴンザレス絵、増田ユリヤ訳/西村書店 ※原題は『KAMALA and MAYA’S BIG IDEA』、増田さん翻訳の日本版が10月発売予定 (中央)『地図とグラフで見る第2次世界大戦』ヴァンサン・ベルナール、ニコラ・オーバン共著、ジャン・ロペズ監修、太田佐絵子訳/原書房 (右)『小さい魔女』オトフリート・プロイスラー著、ウィニー・ガイラー絵、大塚勇三訳/学研プラス
(左)『夢のビッグ・アイデア カマラ・ハリスの子ども時代』ミーナ・ハリス著、アナ・R・ゴンザレス絵、増田ユリヤ訳/西村書店 ※原題は『KAMALA and MAYA’S BIG IDEA』、増田さん翻訳の日本版が10月発売予定 (中央)『地図とグラフで見る第2次世界大戦』ヴァンサン・ベルナール、ニコラ・オーバン共著、ジャン・ロペズ監修、太田佐絵子訳/原書房 (右)『小さい魔女』オトフリート・プロイスラー著、ウィニー・ガイラー絵、大塚勇三訳/学研プラス
 『小さい魔女』は今年改めて買い直した、幼い頃に大好きだった童話です。カマラ・ハリス米副大統領の姪が描いた絵本は、プレイパークをつくる話など、実行力と正義感あふれる母と叔母の子ども時代が描かれていて、楽しく翻訳しました。
書棚はどうなっている?
池上さんの書棚「編集部の要求を受けて、床まで本で埋まっている書斎の一部を紹介します。これで勘弁してくださいね」
池上さんの書棚「編集部の要求を受けて、床まで本で埋まっている書斎の一部を紹介します。これで勘弁してくださいね」
 「自宅の本棚はお見せできる状態ではないのですが……」と話す池上さん。床まで本で埋まっている書斎があるそうです。

増田さんの書棚と保管箱。「本の収納と格闘中です!」
増田さんの書棚と保管箱。「本の収納と格闘中です!」
 増田さんは「本棚にはどうやっても入り切らないので、本を執筆するための資料はテーマ別に箱詰めして、積み上げています」と、本棚と箱で対応しています。「それでも行方不明の本が続出(笑)」なのだそうです。
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池上さん
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増田さん
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