2人が追いかけている著者は
── ずっと追いかけている著者はいますか?
増田 折に触れて読むのは小池真理子さんの小説です。恋愛や肉親の死など人生の節目を迎えられるたびに作風が変わる。同じく直木賞作家でパートナーの藤田宜永さんを昨年亡くされたことで、愛と死を今後どう書かれるのかが気になっています。
池上 私は今野敏さんの『隠蔽捜査』シリーズをずっと読んでます。主人公が8巻から神奈川県警に異動するのは、対談させていただいたときに私が提案したアイデアなんですよ。


読書好きが実践する本の探し方
── 次に読む本や面白い本はどう見つけていますか。
池上 書店のレジによく置いてある出版社の新刊広報誌は楽しいですよ。集英社の『青春と読書』、新潮社の『波』、岩波書店の『図書』。新聞各紙の週末の書評欄も必ずチェックしますね。
増田 私は本屋さんですね。気になる本があると、奥付を開いて、いつ出版されたか、増刷回数でどれくらい売れているかをついチェックしてしまいます。
池上 プロの見方ですねえ(笑)。本屋はどう回る? 私は最初に新刊コーナー、次にノンフィクション系、新書、文庫、専門書の国際情勢や経済のコーナーという順。増田さんは?
増田 雑誌コーナーは必ず見ます。ファッションをはじめ、女性たちの間で今何がトレンドなのかが分かるので。料理やお菓子の本の棚もきっちり見ます。料理の歴史や世界の食材などを、楽しい構成で教えてくれる料理本がたくさんあります。
池上 特定のテーマを知りたいときは、新書のコーナーで探すのもいいですよ。かつての新書は、学者が書いた難しい本も多かったですが、今は1テーマについて1冊で非常に読みやすく書かれた新書が増えました。
増田 女性誌やファッション誌のインタビュー記事もヒントになります。職業も年齢も生き方もさまざまな方たちの言葉から、関心の領域が広がります。
池上 本の話となると増田さん、熱弁が止まらないねえ(笑)。
増田 池上さんほどじゃありませんよ(笑)。

『淋しいアメリカ人』桐島洋子著/文春文庫
『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』米原万里著/角川文庫

気仙沼図書館の「池上 彰文庫」
東日本大震災時の津波で本を失った宮城県気仙沼図書館に、池上さんは蔵書を送り続けている。今や合計約2000冊という「池上彰文庫」は開架式で誰でも見られる。「池上 彰文庫ができて、図書館全体でも社会科学分野の本の貸し出しが増えた」(図書館スタッフ)そう。

構成/安原ゆかり 取材・文/中城邦子 写真/窪徳健作(池上さん、増田さん)