昼間仕事をしながら議員活動ができる

増田 そもそも日本に女性議員が増えない背景には、政治家というと、特別な人がなる職業という印象が強いことがあると思います。だからこそ風当たりも強い。海外では、普通に働き、暮らしている人が政治家として活動している姿によく出会います。フィンランドで取材をした小学校には、地元の市議会議員を兼務する先生が数人いました。

池上 私が取材したイギリスの地方議会は平日の夜に会議が開かれていました。議員は、昼間は別の仕事や育児や家事をして、夜に議会で住民の代表として活動することができる。

── 副業で議員!?

池上 そもそも諸外国は地方議員の歳費が日本みたいに高くないのですよ。

増田 交通費プラス日当ぐらいですから、他に仕事がないと生活できない。

池上 国会議員はさすがにフルタイムだと思いますが、運転手付きの黒塗りの車で議事堂に乗りつけるような「特権階級」じみたことはしません。デンマークの国会議員は自転車通勤が多いそうですよ。

増田 オランダのルッテ首相も、自転車通勤ですよね。

首相が「自転車通勤」するオランダ
首相が「自転車通勤」するオランダ
オランダのルッテ首相は、国会へ自転車で通勤する姿がたびたび話題に。デンマークは議事堂前に駐輪場があり、議員の自転車が並ぶ

池上 もうひとつの課題は、海外では落選しても元の仕事に戻れますが、日本は立候補するなら会社を辞めて出ろという話になってしまう。ハードルが高いですよね。本当はどこの政党だろうと、同僚が選挙に出ると言ったら「頑張ってね」と言い、落ちたら職場に戻ってきた人に「いい経験になったね」と言える世の中をつくっていかないと。

増田 特別な人しかなれない職業になってしまうと、一般の人の感覚からずれることも往々にして起こる。法案を作るときも生活者感覚が生かされる政治の場であってほしいですよね。

日本に女性の政治家を増やすには?
池上さんの視点
・副総理を女性にする
・女性候補者が半数に満たない党は交付金を減額

増田さんの視点
・候補者を男女半々にする法律を作る
・地方議員は兼業でできるようにする
もっと知りたい人におすすめ書籍
【池上さん推薦】
『アンゲラ・メルケル 東ドイツの物理学者がヨーロッパの母になるまで』
マリオン ヴァン・ランテルゲム著、清水珠代訳/東京書籍
16年にわたりドイツの首相を務めたメルケル。東ドイツでの生い立ちから35歳で政治家となり、退陣するまでの評伝。

『百合子とたか子 女性政治リーダーの運命』
岩本美砂子著/岩波書店
日本は女性首相を育てられるのか? 女性初の首班指名の土井、初の自民党総裁候補の小池。対照的な軌跡から切り込む。

【増田さん推薦】
『総理の夫 First Gentleman 新版』
原田マハ著/実業之日本社文庫
42歳の若さで女性総理大臣となった主人公の奮闘と「First Gentleman」として妻を支える夫の姿を描く政界エンタメ。

『女性の世界地図:女たちの経験・現在地・これから』
ジョニー・シーガー著、中澤高志ほか訳/明石書店
世界の女性の教育、仕事、健康などの現状がカラフルな地図で見えてくる。世界初の「ジェンダー・アトラス」最新版。

構成/安原ゆかり 取材・文/中城邦子 写真/窪徳健作(池上さん、増田さん)