新型コロナウイルスに対して接種が進むmRNAワクチン。世界を救う技術を開発した女性科学者、カタリン・カリコさんに増田ユリヤさんが迫りました。

カリコ博士ってどんな人?
【池上さん】画期的なワクチンのもとになる技術をつくった女性ですね【増田さん】高校生のときに書いた手紙が、科学者を目指すきっかけになりました
増田ユリヤさんはカタリン・カリコさんの生い立ち、ワクチン開発の裏側を執筆。『世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ』増田ユリヤ著/ポプラ新書

コロナワクチンの基礎mRNAの開発者

編集部(以下、──) 新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、感染者数が減ってきました。「ワクチンの女神」と呼ばれている女性研究者がいるそうですね。

増田 モデルナ社、ファイザー社のワクチンの基礎となっているメッセンジャーRNA(mRNA)という仕組みを、40年も研究を続けてきたカタリン・カリコ博士(以下カリコさん)です。

池上 既存のワクチンは、感染力をなくした(=不活化した)ウイルスの一部を人体に投与し、それによって免疫が作られます。一方、mRNAワクチンはウイルスと同じたんぱく質の一部を体内に作る設計図情報を注射するもので、その設計図を元に体内で免疫が作られ、mRNAワクチン自体は分解されて消えてなくなる、非常に画期的な仕組みです。増田さんはカリコさんに取材をしたんですよね。

── どんな人ですか?

増田 シャイで気さくで純粋な方です。ハンガリーの田舎町生まれで、小さいときから自然を観察するのが好きで、小学生のときに高校生に混じって参加した生物学のコンテストで優勝したという才能の持ち主です。小6で人口爆発をテーマに論文を書いたそうですよ。

謙虚でシャイ、スーパーのレジに並ぶ間も論文を読む勉強家、90kmを自転車通勤……カリコ博士の素顔
謙虚でシャイ、スーパーのレジに並ぶ間も論文を読む勉強家、90kmを自転車通勤……カリコ博士の素顔

池上 科学者を目指すようになったきっかけがいいんだよね。

増田 カリコさんが属していた高校の生物クラブで、顧問の先生が生徒たちに、「ハンガリー出身で、海外で活躍する科学者たちに手紙を出してみよう」と提案したんだそうです。ノーベル賞を受賞したある科学者は住所が分からず、郵便局員に「封筒に名前とUSAと書けば届くよ」と言われて出してみたら、翌週に返事が来たそうですよ。

池上 「山中伸弥・ジャパン」と書いて投函するようなものだ。

増田 何人かの科学者と文通が続き、そこからカリコさんは大いに刺激を受けたようです。

池上 生物クラブの顧問は彼女の生涯の恩師ですね。

増田 大学時代にはその先生の指名で後に世界遺産となるハンガリー大平原の調査メンバーとして、調査場所まで片道90kmを自転車で通ったそうです。

── 頭脳も体力もすごい!