——イギリスではなぜ昔から女性君主がいたのですか?
池上 かつては「男子優先」で跡継ぎになる男性がいないときに女王が即位しました。エリザベス2世も男の兄弟がいなかったから王位を継いだのです。

増田 そして、ダイアナ妃の交通事故死によって王室批判が高まったときに、開かれた王室への改革の1つとして、一番初めに生まれた子どもが男であれ女であれ、次の継承者とする「長子優先」に変えたのです。
池上 ヨーロッパ各国は1979年のスウェーデンを筆頭に次々と長子優先にしています。今、たまたま、ヨーロッパの女性君主はデンマークのマルグレーテ2世女王だけですが。

——なぜ日本はそうならないのですか?
池上 皇室典範で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定められています。ちなみに皇室典範は1947年に制定された皇室に関することを規定する法律です。
増田 日本も昔は女性天皇がいました。古くは推古天皇に始まって、6世紀末〜8世紀までに6人8代の女性天皇が誕生しています。2人は重祚(ちょうそ)(退位後、再び即位)ですが。その後は、17世紀と18世紀におひとりずつ。ただ、すべて父方に天皇の血を引く、男系女子です。

——愛子さまの成年の記者会見を拝見して、女性天皇はなぜだめなのかと感じた人もいたと思います。
池上 あのご年齢であの美しい言葉遣い、見事でしたよね。
増田 とても素敵に成長されたなと思いました。
池上 2006年の小泉内閣時代に、皇室典範を改正し、女性天皇を認める案を国会に提出することになっていたのですが、秋篠宮家に男子が誕生したことで立ち消えました。憲法は皇位を世襲のものと定めていますが、皇位継承については、国会の議決した皇室典範によるため、この法律が変わらないと女性天皇は誕生し得ません。
直近の女性天皇は、1762年に即位し、70年に譲位した後桜町(ごさくらまち)天皇。歴史上、女性天皇は8人いる。全員、父方に天皇の血を引く男系女子。
——欧州の王室では、女性王族は結婚しても王族としての公務を続けるようですが、日本はそれもないのですよね。
池上 皇室典範では「皇族女子は、皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」となっていますから。
増田 未成年の男系男子は悠仁さまだけです。皇室の公務の多さを考えると、将来大変な負担がかかると心配されています。
