——ヨーロッパには王様がいる国が多いですが、フランスにはいませんね?
池上 革命で王政が倒されたからです。革命で国王をギロチンにかけ、君主の代わりに国民が主人公となりました。ロシアでも革命で皇帝一家が惨殺されました。韓国は日本による韓国併合で李王朝が消滅し共和制となりました。革命などの大きな変化がなかった国では少しずつ体制を変えながら、今も君主制が残っているわけです。


増田 スウェーデン、ノルウェー、オランダなど、国王がいるヨーロッパの国々はいずれも立憲君主制で、国王は国民統合の象徴としての存在です。
池上 例えばベルギーは、北部はオランダ語、南部はフランス語、東部はドイツ語と3つの言語があり、違う文化圏でいがみ合いもあるのですが、国王がいることで統合が守られています。
増田 日本も政党による政治的な主張の違いはあっても、皇室が心のよりどころというか、いてくださることで何か1つにまとめてくれる存在ですよね。
池上 日本共産党はかつては天皇出席の国会開会式に欠席していましたが、現行憲法の天皇は認め、制度を守るとして、現在は出席しています。
増田 昭和天皇は「天皇主権の」大日本帝国憲法で即位されましたが、今の上皇は「国民主権の」現行の憲法で即位されましたからね。
池上 イギリスも、労働党と保守党が議会で激しく対立しても女王のもとでは団結しました。尊敬される君主は国を1つにまとめる存在になると思います。アメリカが今、民主党と共和党であそこまで徹底的な分断が起きているのは、国王に代わる国家元首が選挙で決まる大統領だからという点もあるのです。
