逆境だらけの環境で40年間続けた研究が新型コロナワクチンに

増田 私が挙げたいのは、カタリン・カリコさんです。

池上 新型コロナの「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン」の開発者ですね。(参考・前回記事「新型コロナワクチンを開発 カリコ博士の素顔と劇的人生」

mRNAワクチン開発者 カタリン・カリコさん
mRNAワクチン開発者 カタリン・カリコさん
ハンガリー出身で40年にわたりRNAを研究し、新型コロナウイルスの感染や発症、重症化を防ぐ「mRNAワクチン」の開発に貢献。現在はビオンテックの上級副社長。ノーベル賞への登竜門といわれるラスカー賞を受賞

増田 ハンガリーからの移民で、理系研究者では少数の女性であることなど苦難が多いなか、諦めずに努力を続け、40年かけて実現した彼女の世紀の発見と技術が、新型コロナ禍で私たちの命を救ってくれるワクチンに結びつきました。

 その業績はもちろんのこと、夫に「君の時給は1ドルだ」とからかわれるくらい研究熱心で、信頼していた人に母国への強制退去まで画策されるような嫉妬を受けてもめげないなど、彼女の生き方には学ぶものが本当に多いのです。私たちは不遇なときについ、周りの環境のせいにしがちですが、カリコさんは常に自分がやるべきことに真っすぐに向かっていった。それがいかに大事なことかに気づかされます。

中国に立ち向かう勇気がすごい、気配りの人

池上 台湾の蔡英文さんも挙げておきましょう。10月には、建国記念日に相当する「双十節」の式典で、「台湾は中国の圧力に屈することはない」と演説していた。あの巨大な中国に立ち向かうってすごいなと思います。

台湾総統 蔡英文さん
台湾総統 蔡英文さん
1956年台北生まれ。台湾大学卒業後は英米の大学院に留学、2008年から民進党主席。16年に台湾初の女性総統となった。支持率低迷の時期もあったが20年の選挙では過去最多の817万票を獲得、熱い支持を集める

── 中国の圧力とは?

池上 習近平国家主席が19年に一国二制度を台湾に適用すると言ったことに対して、台湾は断ったのです。途端に、中国から台湾への嫌がらせが始まりました。世界保健機関(WHO)に入れないとか、毎日戦闘機や爆撃機がすぐ近くまで飛んでくるとか、すごい圧力をかけてきているのです。

増田 台湾でワクチンが不足したときに、日本から贈りましたよね。

池上 それに対してツイッターですぐに日本語でお礼をしていたね。あの気配りもすごいよね。

トランプ前大統領にすごんだトップ

増田女性リーダーでは、ドイツのアンゲラ・メルケルさんも突出した人物です。やっぱり、この人は外せない!

池上 この秋に4期16年の任期を終え、政界引退を表明していたけれど、次が決まらないんだよね。だから当面、首相代行。

ドイツ前首相 アンゲラ・メルケルさん
ドイツ前首相 アンゲラ・メルケルさん
旧東ドイツで育つ。05年にドイツ初の女性首相となり16年在任。EU統合のけん引役を務めた。福島第一原発事故を受け、自国内の脱原発政策を決定。難民受け入れに反発もあったがコロナ禍で指導力を発揮

増田 男女を問わずあれだけの政治家はなかなか出てこないんじゃないかという気がします。自分の正義を貫こうとする点はカリコさんにも共通します。

池上 そういえば、2人とも理系で、旧東側育ちだよね。

増田 科学的な根拠がないことはやらない、根拠があれば決断をするし、トランプ前大統領にもすごんで見せる。あんなふうに堂々と違うことは違うと言える人がこの先、出てくるだろうかと考えてしまいますね。

 批判もありましたし、難民の問題で支持率を下げたりもしましたけれど、コロナ禍のピンチのときには指導力を発揮して支持率を上げた。政治家として底力があったという気がしますね。