優しさと強さと勇気をくれる女性たちに拍手
池上 一度は収まったコロナ感染者数が、21年夏から秋に再び増えてしまった国も多かったのですが、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相の言葉に感心しました。子どもにも分かる言葉でメッセージを繰り返したことが印象的でした。
かつてフランスのマクロン大統領が「コロナとの戦い」という言い方をしていたけれど、彼女は、国民に「Be Kind(優しくね)」って言ったんだよね、戦おうではなく。こういうときだからこそ優しく助け合いましょうと。コロナに感染した人は負けたわけじゃないってことなんだよね。トップの言葉ひとつで社会の空気は変わりますよ。
池上 ノーベル平和賞を受賞したフィリピンのジャーナリスト、マリア・レッサさんも言葉の力がすごい人。逮捕や命の危機にもひるまず、ドゥテルテ政権を批判しました。
池上 ドゥテルテ大統領が「麻薬犯罪者は裁判なしで殺してもいい」と法改正をし、フィリピンでは今ものすごい数の人が殺されています。彼女はそれを追及し、ネットニュースで報道し続けた結果、いわれのない容疑をかけられ別件逮捕もされた。それでも立ち向かうことをやめない。素晴らしい勇気の持ち主です。ネットニュースというのも現代っぽいと思いました。
増田 著作や発言を通して勇気を与えてくれた人として、上野千鶴子さんも挙げたいです。『在宅ひとり死のススメ』をはじめ、枠にはまらない生き方を肯定するメッセージに、懐の深さを感じます。
増田 結婚しないことや子どもを持たないことに社会はまだまだ否定的な面がありますが、上野さんは常に、おひとりさまだっていい、生き方は多様であっていいというメッセージを発してくれるので私自身も励まされています。
構成/安原ゆかり 取材・文/中城邦子 写真/窪徳健作(池上さん、増田さん) イラスト/鈴木衣津子