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キーパーソン、視線の先

定年後も幸せに生きる 意外と知られていない大切なこと

藻谷浩介(下)/人生を野球の「9回裏+延長戦」とし、阿修羅道を抜け出せ

Terraceで話題!

好きなことがなく、⾷べるだけの⽼後は苦痛

―― 若い読者の皆さんにはまだ先の話ですが、「退職後も豊かで充実した時間を過ごせる」ようにするには何が必要ですか。

藻谷 昭和は「7回裏で試合終了」でした(昭和60年の男性の平均寿命は約75歳)。ところが、令和の人生は「9回裏まで+延長戦も」へと変化しています。

昭和は「7回裏で試合終了」。令和は「9回裏+延長戦も」(藻谷さん作図、以下同様)
昭和は「7回裏で試合終了」。令和は「9回裏+延長戦も」(藻谷さん作図、以下同様)

―― 定年退職する60~70歳までのキャリアや収入源までしか、具体的に考えられませんね。

藻谷 令和の現実に昭和の発想で当たることは危険です。8回、9回、延長戦を想定しないのでは、「家事を一切せずに熟年離婚されてうろたえる親父」を笑えません。

 古い話ですが、100歳を超えた双子でテレビの人気者だった「きんさん、ぎんさん」こそ、人生の達人でした。彼らが9回まで何をしていたかはどうでもいいこと。最後が大事です。

 そもそも何のために働くのか。好きなことをしながら、食べていくためです。この2つの両立は、後の回ほど重要になります。好きなことがなく、食べるだけの老後は苦痛ですよ。

 では、「好きなこと」とは何か。やりたいこと? 得意なこと? 人に尊敬されること? どれも違います。好きなこととは「続けても苦にならないこと」です。若いうちは嫌なことでもやるべきでしょうが、年を重ねた人間には「続けても苦にならないこと」が重要です。

 もうひとつの「食べていくため」とは、どういうことか。もうけるため、勝つため、世に認められるため、ではありません。「プロとしてお金を頂けるようになること」です。プロといっても、小さなプロでいいんです。85歳のおばあさんが直売所でお弁当を売っているのも、プロとしてお金を頂いていることなんです。きんさん、ぎんさんも人生のプロでした。

―― 苦にならないことをやり続け、プロとしてお金を稼ぐ。自分の生き方を他人と比較しないことも大切ですね。

阿修羅道から抜け出すにはどうしたらよいか?

藻谷 比較は無意味です。苦にならないことをやり続け、プロとしてお金を稼ぐことは、全員が勝ち負けなくできます。「他に勝たねば」という妄想に囚われると、私の唱える「欲求7段階(2×3+1)説」の最上位、「かけがえのない人生への欲求」を満たせません。

―― また面白そうな説ですね。何ですか、それは。

「9回裏+延長戦では、いつまでもカネや地位を目指していてはダメです」(藻谷)
「9回裏+延長戦では、いつまでもカネや地位を目指していてはダメです」(藻谷)

藻谷 周囲と自分を比較して勝とうとするのは、「優越欲求」の求めです。お受験に走る人は典型で、子どもを競わせて自分の優越欲求を満たそうとするわけです。ですが優越欲求は、満たせば満たすほど、誰か見下す対象がないと幸せになれない「弱者依存症」になりやすい。やがて自身の向上を忘れ、自分より劣った者を探す阿修羅(あしゅら)道に入りがちです。

 そうではなく「かけがえのない人生への欲求」を満たさなければなりません。勝ち負けではなく、代わりがいない自分になれるか。まずはカネや地位、学歴など、上下のある指標で自分や他人を測るのをやめることがスタートです。「勝つこと」ではなく「かけがえのない自分になること」が大事だと気づいたとき、より多くの人が自然に、大企業や東京という縛りから脱し、起業や地方を選ぶのではないでしょうか。

―― 今日は「脱・東京一極集中」というテーマで、幅広いデータ解説をしていただきました。最後は人生の究極の目標まで視野に入り、まさに「多様な働き方」を考えるきっかけになりました。どうもありがとうございました。

取材・文/羽生祥子(日経xwoman編集部) 取材協力/長坂邦宏 イメージ写真/PIXTA

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