各界で先進的な活動をしている第一人者と、一歩先の未来を考える連載「キーパーソン、視線の先」。1人目は、地方経済・人口問題に詳しい研究者の藻谷浩介さん。日本の市町村すべてを訪れた豊かな経験をベースに、「過去のデータを読めば近未来が見えてくる」と説得力ある分析を展開する。(下)では、令和の「人生100年時代」を「野球の9回裏+延長戦」に例えつつ、賢く幸せに生きるための方法を、日経xwoman編集委員の羽生祥子が聞いた。
日経xwoman編集委員・羽生祥子(以下、――) 「藻谷浩介 大都市と田舎の逆転現象 "脱・東京一極集中”」では、大都会・大企業で働くことだけが、いわゆる"勝ちパターン”ではなく、地方移住も視野に入れたキャリア設計が有効だということでした。東京で働きづめの生活だけが選択肢ではないということですね。「人生100年時代」といわれ、2021 年4月から企業は70歳までの従業員の就労確保を努力義務とすることを求められています。
藻谷浩介さんは、人生を野球のゲームに例えて、9回裏(90歳)まであると説明しています。学校教育を終えた後、定年までに働く時間がざっと10万時間あり、仕事以外の時間も10万時間ある、そして定年後も10万時間あるんですよ、と分かりやすく指摘しています。それを図式化したのがこの「人生は9回裏まである!」の図ですね。
藻谷浩介さん(以下、藻谷) これは、コミュニティデザイナーの山崎亮さんのアイデアを了解を得て図にしたものです。
ポイントの1つはアフター5に「地域活動を楽しくやって、自給・物々交換・恩送り(誰かから受けた恩を、直接その人に返すのではなく、別の人に送ること)をする相手を増やす」ことです。過疎地なら自分で畑もやれますし、近所の人がとにかくいろいろ持ってきてくれますし、あれこれ教えてもくれます。
そんな地域コミュニティは煩わしいという方。東京では、隣近所の代わりに社内に地域以上にディープなコミュニティが出来上がっていませんか? しかも人間関係に上下があり、「力はすべて仕事に使おう。家ではよく休んで明日またよく働こう」という仕組みになっていませんか? 私は、地域のコミュニティよりも粘着質で一方的なのが会社だと思います。
■2021年11月30日(火)~12月1日(水)予定
詳細や視聴お申し込みはこちらのページに随時掲載していきます。